【特集】第31回定例シンポジウム報告「台湾の現状と日米台の安全保障」

 第2部「東アジアにおける日米台の安全保障問題」

≪基調講演≫ 「日米台の安全保障の重要性」

特別顧問・ヴァンダービルト大学名誉教授 ジェームスE・アワー
 皆さんこんにちは。ジェームス・アワーです。本日は日本戦略研究フォーラムの長野禮子さんから、日米同盟について、そして、日米台の安全保障の重要性について話すようにとの要請を受け、テネシー州ナッシュビルから参りました。ジャック・ダニエルのウィスキーとカントリーミュージックで有名なところです。

台湾問題と日米関係
 冷戦時代と比較しましても、日米同盟の信頼性を確保する上で極めて重要な役割を果たしているのが「台湾」であります。台湾の役割は日米双方にとって重要なことであります。1950年以前から米国のトルーマン政権は、1949年に台湾に逃げてきた国民党の蒋介石に対して共産党と協力するように言いました。即ち「台湾における蒋介石の権力を維持するために米国が支援することはない」とはっきり言ったわけです。
 しかし、北朝鮮が韓国を突如攻撃したことから、米国の台湾に対する政策は劇的に変わりました。そして中国大陸による台湾攻撃という有事の際には、その攻撃から台湾を守るために、第7艦隊が動員されることになりました。それ以来、米国の共和党、民主党いずれの政権でもこういった台湾への姿勢は変わっておりません。その後、米国と台湾の中華民国との安全保障条約が失効しましたが、それに替わる台湾関係法を成立させ、レーガン政権は台湾に対して6つの保証を約束し、それが現在も堅持されております。
 そして日本に信頼してもらうためにも、米国は、日本の施政権下にある領土に対する攻撃があった場合には、日本と共に行動するというコミットメントを繰り返しております。勿論、尖閣諸島の問題についても、オバマ大統領はこのことをはっきりと述べております。しかし、その信頼性を高める為には、日本も同盟国としての責任をきちんと果たさなければならず、日本の安全保障に直接的な影響を及ぼす事態の場合には、日米が協力して行動しなければなりません。
 米国は64年間に亘り第7艦隊によって台湾が攻撃されないようにすると言ってきました。米国がそれを堅持しなければ、中国からの攻撃から台湾を守ると言っても、信用して貰えないということになるでしょう。また日本は中国の台湾への攻撃を抑止しようとする米国を支援できるように、日本として最低限度の防衛力を維持しなければなりません。そうすることによって日本に対する信頼性が担保され、米国は日本の側に今後も立ち続けようと思うわけです。
 日米が最低限の努力をしなければ、中国は、台湾の人々の意思に背いて台湾を奪うために益々大胆になります。そしてそれは、日米両国の緊密な安全保障関係を悪化させることになるでしょう。日米が中国の侵略を阻止するためにもう少し努力すれば、危険はなくなるでしょう。つまり、中国に対するより強い抑止力が生まれるということです。
 台湾の安全保障は、常にデリケートな問題です。日米は中国に対し、慎重かつ懸命に、ソフトに語り続け、しかし、最低限に必要な「棍棒」を持ち続けることを忘れてはならないと思います。

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