【特集】第31回定例シンポジウム報告「台湾の現状と日米台の安全保障」

 第2部「東アジアにおける日米台の安全保障問題」

≪報告≫ 「確かな台湾抑止の創出」
―変化をもたらす主体としての台湾海兵隊―

陸上自衛隊太平洋海兵隊連絡官(米海兵隊大佐) ジョナサンC・ゴフ氏
 皆さん、こんにちは。私は米海兵隊に所属しているジョナサン・ゴフと申します。現在、陸上自衛隊で太平洋海兵隊連絡官を務めております。米海兵隊と日本のパートナーである陸上自衛隊との間の連絡を担当する任務ですが、海上自衛隊、航空自衛隊とも連絡をとることもあります。
 私は、この1年間に台湾に行く機会が数回ありました。これまで多くの台湾軍将校と会って、交流を深めてきました。私は今制服を着ておりますが、本日のシンポジウムではあくまで私の個人的な見解を申し上げたいと思います。
 今日は次の2点をお話の前提として申し上げます。まず1点目は、台湾には政治的にも軍事的にも自ら防衛する意志があるということ。2点目は、中華人民共和国は、台湾にとって確実に現実的な軍事的脅威である、ということです。各国の政府や研究者等が疑問を投げかけるかも知れませんが、私はこの2点が事実であることを大前提としてお話したいと思います。

台湾の防衛力と戦略
 台湾の防衛についての議論は続いていますが、最近の出来事として注目されている香港での抗議活動が弾圧されるといった問題が起こると、台湾防衛の重要性に改めて気付かされます。最近の香港の例は、中国の「一国二制度」による解決の危険性を示しています。台湾の防衛は、アメリカや日本だけの問題ではありません。東アジア地域にとっても大きな問題です。台湾独自の力では自分たちを守りきれないでしょう。台湾は軍事力を削減しています。海兵隊も1万6,000人から9,000人に削減されました。私たちは海兵隊の兵力を維持して欲しいと訴えました。完全には廃止されなかったものの、7,000人の削減は台湾の防衛戦略に深刻な影響を与えます。従って、台湾防衛に関して言えば、中国人民解放軍(以下、人民解放軍)が圧倒的な力をもつ通常戦力の多くの分野では、台湾は優位性を失いつつあります。台湾の防衛力は、殆ど通常戦力ばかりでコストの高い防衛力になっています。人民解放軍の近代化が進む一方、台湾軍の戦略や防衛のメカニズムは陳腐化が進んでいます。これが台湾の国力の不均衡の原因となっており、台湾は外交や他の分野でも苦しむことになります。
 これから、私が考える台湾防衛のためのパラダイムの変化を促すための方法についてお話したいと思います。

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