【特集】第32回定例シンポジウム「『歴史戦』をどう闘うか」
《ビデオメッセージ》
「日本の沈黙、いま打ち破るとき」

国家基本問題研究所理事長 櫻井よしこ
 日本戦略研究フォーラム主催の「『歴史戦』をどう闘うか」というセミナーのご開催、本当におめでとうございます。生憎出席することはできませんが、私の思いを一言お伝えいたします。
 「歴史戦」……振り返ってみますと、日本が反論する機会は山ほどありました。今日のような深刻な事態になることが済まずにくることもできた筈です。
 思い返してみましょう。吉田清治という人が大変なウソつきの本を書きました。この本は韓国語に翻訳され、その本を読んだ韓国の女性記者が実地調査をして吉田清治氏の書いたことは全部ウソだと発表しました。それが80年代の終わりです。そして、秦郁彦先生が実際に済州島にお出かけになり現地調査をなさって、これは全部ウソだということを産経新聞に大きく発表したのが92年でした。その翌年に河野談話が発表されました。なぜ河野談話を阻止することができなかったのか。秦郁彦先生の研究結果を政治家の皆さん方、そして外交官の皆さん方、こうした国の政治を司る人たちが真剣に受け止めていれば河野談話の発表は阻止することができたかも知れません。
 しかしそれは出されてしまいました。国のスポークスマンとしての官房長官の談話が一人歩きを始め、国際社会に広がって行きました。96年には国連の人権委員会でクマラスワミ報告が出されました。このクマラスワミ報告を読んでみますと、どの日本人も直ぐにこれはウソであることがわかります。私も読んでみてとてもおかしいと思いました。その報告の中に出て来る慰安婦の女性たちの証言は、とてもとても日本軍の行動を証言したものとは思えません。そこに書かれてある内容は、日本人なら決してしないような野蛮な、残酷な罪の数々であります。
 私はそれを読んだ時すぐに、これは日本軍のしたことではない、絶対に違う、寧ろこれは恐らく中国や中国に影響を受けた朝鮮半島の人たちが考える刑罰の在り方だというふうに書きました。でもそれを裏付ける証拠は、私の手元にはありませんでした。しかし、いま、手元には中国の古典的な資料であります『資治通鑑』(しじつがん)があります。紀元前500(403)年から紀元1000(959)年までの約1500(1362)年間の中国社会で起きたことを時系列で書いた大部の歴史書です。司馬光が編纂しています。それを日本語に訳した麻生川静雄さんの作品があり、それを読んだ時に、何とクマラスワミ報告の中に出て来る元慰安婦だったという女性たちが、このようにして日本軍に苛められた、拷問された、挙句の果てに殺されたという証言と同じ内容の刑罰が中国において罪人や政敵に対して与えられていた刑罰と全く同じだったということがわかりました。麻生川さんの翻訳された『資治通鑑』の資料からそうした一連の事実が解りました。


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