【特集】知られざる沖縄の過去と現在の実態
沖縄の地政学的重要性と辺野古移設問題

特別顧問・元アメリカ国務省日本部長 ケビン・メア

沖縄の地政学的重要性
 沖縄は冷戦時代から戦略的に重要な拠点である。那覇からは東京に飛ぶのと同じ感覚でハノイや平壌に飛ぶことができる。また、海兵隊は普天間基地から朝鮮半島まで「アイランド・ホッピング」(島伝いの給油での移動)によって、空中給油をせずに到達できる。
 沖縄の戦略的重要性は、昨今の中国の脅威の高まりに比例する。中国は「第一列島線」を一方的に設定し、その内側での「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力強化を図っているが、沖縄は正にその内側にある。普天間から石垣空港や下地島空港等を経由し、フィリピンやその先の東南アジアにもすぐに展開できるという意味でも、沖縄は「前線」に最も近い場所にあると言えよう。
 よく「何故沖縄の海兵隊はグアムに展開できないのか」という質問があるが、地政学的な観点から見てもグアムでは遠過ぎる。有事の際、直ちに前線に向かわなければならない海兵隊は、常に航空部隊と実戦的な訓練場が隣接した場所に駐屯する必要がある。従って、西太平洋の入口にある沖縄に、高い機動力と打撃力を併せ持った海兵隊の存在が重要なのである。
 一方、「嘉手納空軍基地に展開すれば良いではないか」という声もある。戦略的にも非常に重要な機能を持つ嘉手納基地は、戦闘機のみならず、偵察機や空中給油機等も展開している。ここはハワイと共に、太平洋にある最も大きな航空基地であり、米空軍の戦略の中心である。日本にとっても重要な場所だ。一見広大なスペースに見えるが、有事の際にはアメリカ本土から派遣される補給部隊や支援部隊で一杯になってしまうため、これ以上ゆとりがないのが現実である。




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