【特別研究】

国際法からみた南沙群島における人工島建設

常務理事・東京都市大学環境情報学部講師 井 晉

はじめに
 南シナ海における中国の海洋進出は、地域諸国共通の関心事であり、アジア太平洋地域の安全保障と国際法の観点から様々な問題を惹起している。中国は、南シナ海の西沙群島、南沙群島、中沙群島を囲むように9断線を引いて「中国の海」であるとし、その中の島、岩、礁を中国の領土であると主張している。
 今日問題となっている人工島建設は、南沙群島にある岩礁の埋め立てであり、滑走路や大型船舶用の港湾施設等の建設について、中国が意図や目的を明確にしていないこともあいまって、軍事利用の目的ではないかと憶測されている。中国は、これまで西沙群島のウッディ(永興)島を拡張し滑走路や港湾施設等を建設しているが、南沙群島の岩礁の埋め立てと滑走路や港湾施設の建設が完成することにより、軍事力による「中国の海」の領有や上空飛行の制限を目論んでいると推測されているのである。
 中国が岩礁を埋め立てて人工島を建設することは、国際法上の違法行為であり、即時中止すべきであるとの議論がある。中国は、人工島建設は既に中止されていると表明しているが、人工島での滑走路や港湾等の建設の中止までは言及していない。本小論では、中国が核心的利益と主張する「中国の海」および南沙群島における人工島建設は、国際法上どのように判断されるのかについて検討されている。




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