【特別研究】フランスからのインテリジェンスリポート(その7

フランスから見るヨーロッパの不法移民・難民問題
―深刻化する問題にどう対応するのか?―

研究員・S.Y. International代表 吉田彩子

yoshidaはじめに
 フランスは、緩やかな経済回復が見られるとはいうものの、依然として高い失業率を抱え、アルカイダやダーイッシュ(イスラム国、ISIL)などイスラム過激派グループの影響を受けた若者による国内テロの被害を受けている。その上、こういったテロリストグループによるシリア、リビアでの国の不安定化やサブサハラ諸国の貧困から生まれる多くの移民・難民が、中東・アフリカの各地からEU圏に押し寄せるという過去に見ない状況となっており、フランスはこうした移民たちの通過国として*1、特にカレー(Calais:仏北部)で大きな問題となっている。
 仏政府は緊急対応策を迫られているが、2017年に迫る大統領選も絡み、こういったテーマが政治議論に利用されてしまい、具体的な解決の方向に進んでいないという面も見られる。また、テロリズムや移民問題はEU共通の問題でもあり、各国のコンセンサスが重要な要因となっているのだが、現実には共同解決策を見つけるのに時間がかかりすぎる、というEU独自の組織的問題も見受けられる。
 不法移民問題に関しては、現在、過去最大規模と言われる移民の大きな動きがある中で、EUレベルで新しい移民政策や難民受け入れ態勢の改革(ダブリン規則の見直しなど)の必要性が叫ばれており、共同対応策を見つける方向に動いている。

*1 現在不況のフランスは「通過する国」であり、大半の移民達は仕事が多いイギリスやドイツ、スウェーデンなどへ行くことを希望している。また、エリトリア、エチオピア、スーダンなどの人々は英語圏出身であり、既にイギリスに住んでいる家族を頼っていく、というケースが多い。




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