【特集】第33回定例シンポジウム報告「日本の領域は守られているのか」
《基調講演》
日本の領域防衛

政策提言委員・元自衛艦隊司令官(元海将) 香田洋二
政策提言委員の香田です。今日はこれから日本戦略研究フォーラム第33回定例シンポジウムとして、「日本の領域防衛」に関する発表と意見交換が行われます。今日のテーマは我が国周辺情勢を考慮した場合、正に時宜を得たものであります。残念ながら私は10月20日は韓国に出張中ですので、このビデオにより本テーマに関する私の考えを紹介させていただきます。

我が国の防衛戦略:日米同盟と「盾と矛」
 まず、我が国の防衛の基本となる防衛構想や防衛戦略から本件を見てみますと、その最も重要な要素は何といっても憲法9条と日米安保体制・日米同盟でしょう。
 戦略打撃力の保有を禁じられている我が国は、日米同盟体制の下で戦略抑止と戦略打撃とを米軍の占有任務とし、自衛隊は我が国の防衛に徹する、所謂「矛と盾」に例えられる相互補完任務を柱とする防衛戦略を維持してきました。
 普遍的な戦理からは、敵国及び侵攻兵力の撃滅機能は、普段からの対象国の抑止と、抑止が崩れた場合の戦争終結における必須要件であります。しかし憲法の制約により、我が国はこれを米軍の占有機能とし、自衛隊は我が国の防衛に徹することを柱とする防衛構想を策定して自衛隊の態勢を整備してきました。
 この観点に立って我が国の防衛を考察してみます。仮に我が国に対して悪意を持つ国があるとします。この国は悪意を持つものの、我が国に対する侵略の際に米軍の戦略打撃力により被る代償の大きさを無視することができず、軽々に冒険主義に走れないのが一つの現実です。これが侵略に対する懲罰的な結果を相手国に示すことによる積極的な抑止であります。
 同時に、これだけで全ての侵略を抑止することはできません。ある国が主体的に米国の動きにくい環境を作り、或いは何らかの理由により米国の同盟発動が困難な情勢が生じた際にこれを利用して我が国への侵略を試みることは十分にあり得ます。この様な、米軍の来援が困難或いは遅れる事態において確実に機能する自衛隊の侵略排除能力は、侵略国に対し冒険主義が高くつくことを明確に示し、我が国への侵略を抑止することとなります。これは受動的な抑止力と言えます。
 現実には両者が有機的に機能して対象国の侵略を抑止し、我が国の領域は守られているのです。


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