【特集】第33回定例シンポジウム報告「日本の領域は守られているのか」
《報告》
日本の「空の領域」は守られているか

政策提言委員・元航空支援集団司令官(元空将) 永岩俊道

 航空自衛隊OBの永岩です。
 本日は、日本の安全保障に係る難しいテーマの勉強会ですが、非常に真剣なやり取りがなされており、「事、遅きに失しなかった」という意味で本当に有難い限りです。安保法制に係る国政の場での議論は、どうも机上の空論や神学的な議論が多かったように感じました。まるで日本だけが仮想現実の世界にいるようです。大事なことは、日本周辺の安全保障環境について、今、実際、どのような状況になっているかを自らの目で「直視」することです。実は、とても深刻な状況になっているのが現実の世界なのです。

中東におけるロシアの軍事行動
 日本周辺の「空の領域」について考える前に、まず、世界の「空の領域」の現実の世界に目を向けてみたいと思います。まず、中東、シリアの状況です。
 宮家先生の基調講演では、中東で何か事があると、アメリカはそちらの方に関心を向け、場合によっては、東シナ海域は、「力の空白」状態になる恐れがあるというようなお話がありました。実際、中東、シリアの状況は非常に深刻です。
 世界の情勢変化に対するアメリカの関心の優先順位は、第1に、強引に復活を目指すロシア、第2に、混迷を極める中東のISISやシリア情勢、そして第3に、やっとアジア・太平洋の安全保障関連です。
 この写真は、シリアの軍事目標を攻撃に行く寸前のロシアの戦闘機、スホイ34(SU-34)です。写真を見るとレーザー誘導の爆弾を装備しているようです。また、パイロットはGスーツを装着していないようですが、経空脅威等ないと高を括っていたのか、或いは、精密誘導爆弾攻撃の水平爆撃しかしなかったのか分かりませんが、いずれにしろ、離陸前点検の時の画像のようです。
 シリアにおける空爆状況が実際どのようになっているかと申しますと、地図の左側がロシアの攻撃状況で、右がアメリカやNATOの国々が攻撃している状況です。両者は明らかにそのターゲットが違うということを確認してほしいのですが、本日は、この領域で行われている軍事行動と同類の状況が東シナ海で発生した場合はどう対応すべきかという危機認識を共有して頂きたいと思います。


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