【特集】第33回定例シンポジウム報告「日本の領域は守られているのか」
《報告》
「領海を守る」とは?


政策提言委員・元佐世保地方総監(元海将) 吉田正紀

 本日は、安倍首相、オバマ大統領、習近平国家主席の三人の顔が思い浮かぶような話をいたします。
 こちらは『防衛白書』に掲載されている「中国公船の尖閣諸島周辺の領海への侵入回数」です。この表に私の佐世保地方総監在籍時の期間をオーバーラップさせます。本日私がお話しできるとするならば、ちょうどこの期間、私が尖閣諸島を含むエリアを担当する指揮官として得た様々な経験についてだろうと思います。任務に就いていたのは2012年4月から2014年3月末までの2年間ですが、この期間、尖閣諸島周辺での領海侵入回数は80回を超えています。それまでの2年間(2010〜2012年)の侵入回数はたった2回であることを考えると、この事態の異常さが認識できるのではないかと思います。
 もし仮に、領海を守ることが、領空を守るということ、即ち「他国の航空機、飛行物体が当該国の許可を得ず、領空に侵入することを許さない」ということと同義であるとするならば、私は担当指揮官として失格でして、本日の報告は私の懺悔になるところです。しかし私は同時期に任務に就いていた海上保安官・海上自衛官の名誉のために断言します。彼らは立派に任務を果たしたと思っております。
 従って本日の私の話は、自分の自慢話ではなく、隊員の自慢話です。

エスカレートする中国公船の領海侵入
 海監・漁政(注:2013年に海警・海関とともに「中国海警局」として整理統合)による活動は、この10年で大きく変化しています。下の図は海監、漁政と海軍による活動を年表でまとめたものであり、海監の活動は2007年の定期巡視エリア拡大以降、活発化しています。
 尚、2008年の海監による尖閣諸島領海侵入事案、2009年の米艦艇インペッカブル妨害事案、2010年の海保測量船 「 昭洋 」 への妨害は、このような状況下で生起したものです。
 こうして、2010年9月には、中国漁船が海上保安庁巡視船に衝突するという事案が生起しました。その際の状況は写真の通りであり、7日に中国漁船が海上保安庁巡視船 「 よなくに 」「 みずき 」 に接触、翌日には船長が逮捕されました。その後、14人の乗員が帰国したものの、船長だけは24日に釈放されるまでの間、勾留されていました。


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