【特別寄稿】
安全保障政策を考える

コマツ・リサーチ&アドバイザリー代表 小松啓一郎

「第三次世界大戦」の悲劇が近づいているのか
 2015年11月13日の金曜日(現地時間)にパリで発生した連続テロ事件は、少なくとも130人以上もの死者を出す大惨事となった。実は、その前日にもレバノンの首都ベイルートで死傷者230人以上(うち死者は43人)という大事件が発生している。しかし、国際社会ではパリという先進国の大都市で起きた事件があまりにも衝撃的だったため、ベイルート事件のほうはたった1日で忘れ去ってしまったかのようであった。
 また、パリ事件直後に開催されたG20会議でも、主催国トルコのエルドアン大統領が強調したように、トルコの首都アンカラでもその約1ヵ月前の10月10日に死傷者103人という大規模テロが発生している。しかし、この事件についてもまた既に忘れ去っている向きが多かった。
 パリ事件の発生を受け、オランド仏大統領が非常事態宣言を発出したことも注目されたが、実はその二日後にチュニジアでも大統領護衛隊へのテロ事件が発生し、非常事態宣言が発せられている。更に、同じ11月の24日にはエジプトのシナイ半島のホテルでも自爆テロが発生し、死傷者が出ている。
 他方、これらの事件に先立つ2015年1月7日、パリで風刺画出版社シャルリー・エブド等への連続テロ事件も発生した。しかし、国際社会では、その当日夜からフランス国内でイスラム教の礼拝堂(モスク)に対する手榴弾、火炎瓶の投擲による報復攻撃が百数十件も無差別に続いたことはあまり知られていない。イスラム系と見られる実行犯の自爆テロ発生の度に欧米中心の「有志連合」がイスラム圏への「空爆強化」方針をとり、更なる自爆テロ発生という報復合戦が繰り返されている。



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