【特別研究】

パリ同時多発テロとロシア軍機撃墜事件の「闇」
EU 対アメリカの「新・冷戦」―

政策提言委員・海外セキュリティコンサルタント 丸谷元人

奇妙なメディア報道
 2015年11月13日の夜にパリで発生した同時多発テロは、フランスのみならず、世界を震撼させた。パリ現地時間の午後9時20分頃、サッカーの仏独国際親善試合が行われていたパリ市内の競技場の前で自爆テロが発生。これが、最終的には死者130人、負傷者350人以上を出したパリ同時テロ攻撃の始まりであった。
 今回の事件には、どうしても首を傾けざるを得ないような不審点が非常に多い。例えば、事件現場や当時の状況を撮影した一般人の写真や動画が全く出て来ないという点だ。殆どの人がカメラ付き携帯を持っている今日、これは実に不思議なことである。勿論、事件直後とされる映像はいくつか撮影されているが、それらは現場に「偶然」合わせた報道機関のものであり、しかもいずれも相当に胡散臭い内容である。
 月刊誌『Voice』の2016年1月号に詳述したので、本稿では出来るだけ重複を避けるが、この胡散臭さは主要メディアの報道にも現れている。例えば、この事件発生から数時間後に事件を速報した米FOXニュースは、完全なる「ウソ情報」を真実として報道している。
 まず、同局人気司会者ジェラルド・リベラ氏の娘(仏に留学中)が、偶然にもパリのテロ現場にいたらしく、その娘とたった今電話で話したという同氏を画面上に映し出した。
 リベラ氏によると、サッカーの独仏親善試合が行われていた「競技場」にいた彼の娘は、ハーフタイム近くになって「3発の爆発音」を聞き、その後に「武装した警察特殊部隊や救急隊員らが競技場内に物々しく入って来た」ので、「観客たちは大混乱となって出口に殺到、現場は大混乱になった」と語ったという。
 しかし、これらの「証言」は全て、現場の実態とは全く異なる。まず、3発の爆発は試合開始20分後からハーフタイムの途中に至るまでの30分の間に、それぞれ10分と20分という間隔で発生しているし、当時の映像を見ても、観客がパニックになって外に逃げ出したという事実もなければ、試合の途中に武装した警察特殊部隊や救急隊員らが競技場内に駆け込んできたという事実もない。実際、「ニューヨークタイムス」の電話取材に答えた女性が、「会場では携帯の電波が使えなかったから、誰もパニックにならなかった」と言っているのだ。
 最も不思議なのは、テロ攻撃に晒された筈のこの親善試合は、その後も何の問題もなく継続され、テロ攻撃発生から1時間半以上も経過した午後11時頃に、仏代表の勝利(2-0)で幕を閉じているということである。




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