【特集】日韓に横たわる諸問題を再考する
韓国は日本や米国との関係を見直そうとしている

JFSS顧問・前韓国駐箚特命全権大使 武藤正敏

 2015年12月28日の電撃的な慰安婦合意から2ヵ月が過ぎた。これまで合意を履行する具体的な動きは見えてこず、これに反対する慰安婦団体の行動が目に付く。その後この合意はどうなっているのか。着実に履行されるのか。合意から2ヵ月後の時点での評価を申し上げたい。また、北朝鮮の核実験やミサイルの発射を受けて、今後日韓関係や米韓、中韓関係はどう変わろうとしているのか。
 結論から申し上げれば、慰安婦合意はまだ入り口に立ったところである。特に難しいのは韓国の国内説得である。ただ、合意は成立したのである。日本が誠実に合意を履行していれば、仮に韓国の都合で破棄することになっても、日本は最早国際社会から批判されることはないであろうし、韓国が再交渉と言えば、国際社会から愛想を尽かされるであろう。韓国に残された道は、国内を説得し、合意を受け入れさせるしかない。
 北朝鮮の核実験・ミサイル発射は中国外交に大きなジレンマとなっている。特に、ミサイル発射予告は、中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表が北朝鮮を訪問している最中に当てつけのように行われており、北朝鮮に対する中国の影響力低下は歴然である。今般米中で合意した制裁案はかなりの前進と見ることもできよう。ただ、中国がその運用にどう取り組むかは未知数である。中国の真意は北朝鮮の崩壊や混乱に伴う難民流出を恐れて、実効性のある経済制裁に慎重である。
 そもそも韓国が中国に接近したのは、北朝鮮への影響力を行使して欲しいからであった。これに応えられない中国に韓国は失望しており、日米との連携を強化し、3国の結束を高めている。中国が制裁案に応じたのは核実験から2ヵ月ほど経ってからである。
 こうした状況を踏まえ、韓国の東アジア外交は大きな転換点を迎えている。


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