3月11日の大地震ならびに大津波でお亡くなりになった方々のご冥福を
お祈りするとともに、被災者の方々に心からの御見舞いを申し上げ、
一日も早い復興をお祈り申し上げます。

 
 Ø 尖閣諸島沖合事件に関する緊急提言
 
尖閣諸島沖合における中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件で、中国人船長を処分保留のまま釈放したことは、極めて遺憾な処置であり、軍事力を誇示した中国の恫喝に屈したことは極めて深刻な問題であると考える。
ここに、日本戦略研究フォーラムの会長、理事長を初め政策提言委員の提言及び所見を掲載する。(原文のまま)

「尖閣事件でまたもなめられる日本」

 9月7日尖閣諸島周辺で中国の漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりすると言う事件が起きた。我が国は公務執行妨害で中国漁船を拿捕し船長ら乗組員を逮捕したが、中国との摩擦を恐れ間もなく船長を除く乗組員全員と船体を中国に返還した。しかしその後も執拗に続く船長を帰せという中国からの圧力に屈し拘留期限が来ないにも拘らず、船長も国内法に基づく適正な対応をしないまま帰国させてしまった。我が国は一体主権を持った独立国家であるのか。この30年以上もの間我が国は、中国や韓国などとの間で問題が生ずるたびに、一方的に我が国が譲歩して問題を解決してきた。我が国が一方的に譲歩するからそのときは問題が早期に解決したかに見える。しかしこれによって日本は外圧に弱い国だという認識が世界中に広まり、後に我が国はより大きな外圧にさらされることになる。
 昭和52年ダッカのハイジャック事件が起きた。パリ発東京行きの日航機が日本赤軍にハイジャックされバングラデシュのダッカに強制着陸させられた事件である。乗客乗員170名ほどを人質に取られた福田赳夫首相は「人命は地球よりも重い」という迷言を残して、超法規的行動により収監されていた日本赤軍6名を解放し16億円の追い銭をくれてやった。横田めぐみさんはその1ヵ月半後に拉致された。いま帰国している曽我さん、蓮池さん、地村さんは翌昭和53年に拉致された。その後何百名もの日本人が北朝鮮に拉致されることになった。
 昭和57年には文部省の教科書検定における侵略進出書き換え事件というのがあった。我が国が朝鮮半島や大陸を侵略したと書いてあったものが進出に書き換えさせられたという事件である。これは朝日新聞などの誤報であったが、韓国や中国が騒ぐので宮沢喜一官房長官は、「教科書の検定に当っては近隣諸国の意向に配慮する」という有名な近隣諸国条項を検定のガイドラインに入れた。教科書は我が国が制定するものであり、他国の干渉を許すべきでないにも拘らずこれもまた我が国が譲歩した。結果としてその後中韓の検定介入を認めることになった。
 昭和61年には藤尾文部大臣が、我が国は戦前朝鮮半島でいいこともしたというような事を言い、これに対して韓国が怒った。このとき中曽根総理は韓国の意を受け入れて直ちに藤尾文部大臣を更迭した。戦後我が国を誉める歴史認識を言って大臣が更迭される第1号である。その後戦前の我が国を弁護するような歴史認識を言う都度大臣などが更迭されることになり、我が国の言論の自由は大幅に制約されることになった。同じ昭和61年に中曽根総理は中国からの圧力により靖国参拝を中止することになった。戦後昭和20年から昭和60年までの40年間歴代総理は靖国参拝を実施してきたのである。中曽根総理が中国に過度に配慮したことが現在の靖国問題を引き起こしている。中曽根総理はマスコミなどでもてはやされることが多いが、私は彼の罪は大きいと思っている。
 平成5年には慰安婦強制連行問題が起きた。そして河野洋平官房長官は、我が国が慰安婦を強制連行したという事実は1件も確認されなかったにも拘らず、強制連行はあったということで韓国との間で政治決着を図った。これは後に石原官房副長官が雑誌や記者会見などで公表したのである。しかしこれによって我が国はまた貶められることになった。実は平成19年から20年にかけて河野洋平氏は、これに関し虚偽公文書作成罪で告訴された。これは7年の時効が成立しているということで彼は犯罪者になることはなかったが、告訴がもっと早ければ逮捕されていたかもしれない。
 その後平成8年遺棄化学兵器の問題が起きた。中国に残置された我が国製造の化学兵器を我が国の責任で処理せよというものである。我が国は戦後武装解除され、化学兵器を含めすべての武器はソ連や中国に取り上げられたのである。捨てたのはソ連や中国であり我が国に責任などない。中国の要求を突っぱねるべきであったにも拘らず、村山内閣、河野洋平外相は中国の要求を受け入れてしまった。これによって我が国の税金が中国に吸い取られる仕掛けがまた一つ増えてしまった。
 これらはいずれも我が国に責任がないにも拘らず、我が国政府はその都度お利口さん振りを発揮して相手の言う通りしてきたのだ。それが長期的に見て我が国の国益を増大するのなら譲歩もいいだろう。しかしこの三十数年の歴史は我が国のやり方が間違っていることを教えている。我が国は簡単に相手国の言い分を呑み、自己主張しないことにより国益を失っているだけである。日本的な謙譲の美徳は国際社会では通用しない、我が国は歴史に学ぶべきである。戦前の歴史に学ぶべきであると主張するサヨクの人たちが戦後の歴史に全く学ぼうとしないのはどういうことか。国際社会を見れば熾烈な利益の分捕り合戦が行われているのが現実である。世界中の人たちがみんな豊かに暮らせるほどの資源は準備されていないのだ。だから全ての国が、「よその国のことなんか知ったことか」という態度で自国のみの利益の追求に血眼になっている。そういう中で今回の尖閣事件で我が国は再度外圧に弱い国と思われ、今後外交交渉能力は大幅に低下することになるだろう。
 それでは何故我が国が外圧に弱いのか。それは自分の国を自分で守る体制ができていないからである。国の安全保障に自信がないから自己主張して問題を起こし戦争になったら大変だと考える。戦争にしないためには問題を起こさないこと、すなわち相手国の言うとおりにした方がよいということになる。我が国の外交が負けっ放しであることが良く理解できる。普通であれば防衛力を強化してなめられないようにしようと考えるが、我が国においては戦後の自虐史観により防衛力の強化は悪であり、それも出来ない。我が国は防衛力が強くなると侵略戦争を始めるらしいのだ。自民党の政治家でもそのようなことを言う人がいて、私は自衛隊在職中に良く茶化して言ったものだ。「先生、われわれ自衛官も忙しいから侵略戦争などやっている暇がありません。来週の日曜日にはゴルフも予定しているんです」と。
 実際にいま我が国の守りは危機的な状況にある。我が国は自衛隊をどんどん縮小しており自衛隊の中国などと比較した相対的戦力は低下の一途である。また我が国の総理大臣には軍事力を使ってでも国家国民を守るという意思がない。だから我が国はなめられているのだ。今回の尖閣諸島の事件でも海上保安庁が撮影したビデオなどによると中国の漁船はわざと体当たりをしてきたようだ。我が国は絶対に銃撃はしないということを読まれてしまっている。この漁船は恐らく中国政府の意を受けて行動しているに違いない。元来中国人は臆病で政府の後ろ盾もなく巡視船に体当たりなど出来るわけがない。「お前、行ってこい。どうせ短時間拘留したら日本はお前を釈放するはずだ。帰ってきたらボーナス弾むから」などと言われて来ているのではないかと私は思う。
 我が国の問題はこのような事態に国際法に基づいた対応が出来ないことである。国際法によれば軍の指示に従わず他国の領海を不法に行動するような船は銃撃され沈められても止むを得ないのである。我が国が国際法に基づいた対応をする国であれば中国はあのような挑発行動には出ないと思う。ところが事件後の我が国の対応は中国の出方を見ながら、中国の言うことも少し受け入れて落としどころを探ろうとしているだけである。だから中国はだんだん居丈高になってくる。何か我が国のほうが問題を起こしたとでも言わんばかりだ。しかも菅総理はこの件について全く他人事のようなことを言っている。中国が意図的に我が国領海で不法行動を行い巡視船に体当たりしているのだから、総理も極めて不愉快であるというくらいの意思表示をしてもよいのではないか。中国は相手が逃げ腰になっているとどんどん出てくる国である。我が国政府は国際法に基づいて毅然とした対応をすればよいのだ。
 これに対し我が国ではあんまり興奮せずに大人の対応をすべきだとか、エスカレートして戦争になったら大変だとか、我が国が中国の傍若無人を許した方が良いとのテレビのコメンテーターなどの意見が多い。私は相手が泥棒をしているのに泥棒をする理由があったのだろうと理解を示すようなこのような対応が戦後の日本を駄目にしてきたと思っている。我が国においては総理大臣でさえ目の前で問題を起こさないことが最優先なのである。事なかれ主義も極まれりである。総理が問題を回避しようとすれば、官公庁も財界も戦うことが出来ない。軍事力を行使してでも国民を守る、国益を守るという総理のその意思が我が国に対する挑発を抑止するのだ。世界中のあらゆる国が自分の国を守るために国際法に基づいて行動している。国際法に基づいて行動してそれが戦争に発展することはあり得ない。また国家の指導者が戦争を恐れていては国益を守ることは出来ない。
 さて日本と中国の軍事力は一体どうなっているのか。今では中国有利にどんどん移行しつつあるというのが実態であると思う。この20年以上中国が2桁以上の軍事力拡張を続けてきた結果である。20年前の冷戦崩壊時我が国自衛隊の海軍力、空軍力は中国のそれを圧倒していた。中国に対し「やれるんだったらやってみろ」という態勢が出来ていた。しかし中国が大幅な軍拡を続け、一方で我が国は軍縮を続けた結果、20年前の状況はひっくり返り今では中国の軍事力が我が国を圧倒するようになってしまったのである。中国が軍事的に自信をつけてきたために最近では我が国周辺で中国の軍事的な示威行動が頻繁に起きるようになってきている。それでも簡単に中国が我が国自衛隊を一ひねり出来るほどの戦力差は今のところはない。我が国が今後中国との軍事バランスをとる方向で努力をすれば、日中間の問題は話し合いで解決されるであろう。しかしいまのまま我が国が軍縮傾向を続ければあと5年、7年経ったときに日本が中国と対等な外交交渉をすることが一層困難になる。我が国がいつでも一方的に中国の言い分を呑まされることになってしまうだろう。我が国では軍事に関する国民教育がほとんど行われないので国民の多くは軍事について無知である。政治家や高級官僚や財界の指導者たちと雖もその例外ではない。多くの人は軍事力は戦争をやるためのものだと思っている。しかしもう大きな国同士が戦争をやる可能性はきわめて低い。軍事力は外交交渉の裏側にあって対等な話し合いをするための道具なのである。話し合いで平和的に問題を解決するためにこそ軍事力が必要で、周辺諸国との軍事バランスを取ることが必要なのである。
 さて我が国では保守派と言われる人たちが「普天間問題などで日米関係がギクシャクしているから中国が今回のような行動に出る。日米関係を強化することが必要である」とのコメントを述べることが多い。それは確かに事実であるが、更に一歩進んで国の守りをアメリカに頼ったままの状態から抜け出そうという意見が出てこないのはなんとも不思議である。
 日本と中国が尖閣をめぐり紛争になったときアメリカは本当に日本を助けるだろうか。もしアメリカが日本を助けると言ったら中国はどう出るか。アメリカの国債を全部売るというかもしれない。またワシントンに一発核ミサイルをお見舞いするぞと核の恫喝に出るかもしれない。この時アメリカはアメリカ国民の生活を犠牲にしながら、またアメリカ国民を核の脅威にさらしながら日本の無人島を守るという決心が出来るだろうか。私は無理だと思う。実は日本国民はほとんど気づいていないが、日米安保は日本が攻撃を受けたときアメリカが自動的に参戦してくれることは保障してはいない。日本を守るかどうかはアメリカの意志に委ねられている。アメリカ大統領が日本を守るという決心をしてアメリカ軍に命令を付与しなければアメリカ軍は行動できない。またアメリカ大統領の決心も2ヶ月を過ぎるとアメリカ議会の同意を必要とするのだ。それではアメリカの議会がいつでも日本を守ることを議決してくれるか。アメリカの議会では、いわゆる反日法案と言われるような法案が年中議決されることを考えれば、この議会に日本防衛を委ねることは極めて危なっかしいことである。アメリカは日本を守ることがアメリカの国益を増大させるときにしか日本を守らない。しかも今後アメリカの国際社会における相対的な国力は中国などの台頭により逐次低下していく可能性が大である。我が国は当面日米安保の体制を維持しながら長期計画で自分の国は自分で守れる態勢を作る必要がある。日米安保はあくまでも抑止のためのものでしかない。万が一抑止が破綻したときには日米安保は機能するかどうかはわからない。日本のせいではなくてアメリカの勝手で。
 我が国の政治は経済問題ばかりではなく政府の専権事項である国を守ることについてもっと真剣に考えることが必要である。いま我が国にとっては「富国強兵」こそが大事なのだ。景気対策のために戦闘機などの国産開発を行ったらいい。戦闘機の開発には7千社もの会社がぶら下がる。国内産業は大いに活気付くに違いない。また雇用対策のために自衛官を10万人ぐらい増員したらいい。そんな金がどこにあるのだと言う人がいるだろう。しかし子供手当ての半分以下でそれは十分実施可能である。今のままでは日本が中国の属領になってしまうかもしれない。
 

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