3月11日の大地震ならびに大津波でお亡くなりになった方々のご冥福を
お祈りするとともに、被災者の方々に心からの御見舞いを申し上げ、
一日も早い復興をお祈り申し上げます。



    第1回「防災と法」研究会報告要旨

                                                                   事務局長  井 晉
  今回、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震と福島第1原子力発電所事故の4月1日以降の呼称)に際して、初めて統合任務部隊が編成され、米軍の支援が正式に要請された。第1回目の「防災と法」研究会として、現行法制の枠組みの中で、政府、防衛省・自衛隊、米軍による対応について時系列的に整理し、如何なる教訓を得たのかを検討した。そしてこれらの対応にあたって、現行法制の枠組みで十分に対応できた行動、できなかった行動を整理し、最後に、実施機関の教訓事項の評価が行なわれた。
 報告においては、先ず、研究会の出発点として、東日本大震災の際のさまざまな事実の相関関係を正確に理解するために、分かる範囲で事実を時系列的に整理した。さらに、これらの事実と関連する法律の規定を照らし合わせ、政府、防衛省・自衛隊および米軍が行なった対応・措置について詳細に分析し、問題点を整理した。
○東北地方太平洋沖地震における対応
 東北地方太平洋沖地震の対応について、関連する現行法、すなわち大規模震災特措法、災害対策基本法および自衛隊法との関連で、これらの法的枠組みがどの程度機能したか否かを検討した。
 大規模震災特措法との関連では、東北地方太平洋沖地震が同特措法の規定にはなかったため、防衛省・自衛隊は、準備未完のまま対応が迫られたのが現状である。しかし、同特措法には東海地震および南海地震を対象とした法整備はなされているし、首都直下型地震に対しても計画準備があり、自衛隊も訓練を重ねてきていることもあり、政府や自衛隊は、東北地方太平洋沖地震に際しても同特措法に倣った対応をとるべきであったと思われる。
 今回機能した法律としてまず挙げられるのが災害対策基本法である。この法律は災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、よって?社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とした法律である。今回もこれに従って、緊急災害対策本部室や宮城県現地対策本部、岩手調査団、福島調査団などが設置された。
 しかし、総理大臣と緊急災害対策本部長の「権限」が不明確であったため、各種対策本部の乱立と各種担当大臣の乱造が生じてしまい、緊急災害対策本部の「役割」そのものが不明確となってしまった。また、緊急災害対策本部長の「指示」が不明確であったのは、指示様式が未制定だったことが原因であるが、自治体機能の瓦解に伴う措置指示が不明確であったことから、被災地での混乱が現場活動の妨げになってしまった面もある。このあたりは今後、検討する必要性がある。
 震災に適用された法律として次に挙げられるのは自衛隊法である。3月11日の発災後、関係県知事からの要請で災害派遣命令が出され、16日に予備自衛官と即応予備自衛官に災害召集命令が出された。自衛隊の対応は、大臣命令への移動や、現地における自治体との連携、警察や消防、海上保安庁など関係機関との連携調整についていずれもスムーズであったといえる。自衛隊は、救援の基本として防災業務計画によってあらかじめ自衛隊の役割が明確になっているが、今回の地震では、遺体の搬送・埋葬、生活支援、瓦礫の除去、民間支援物資の輸送・配分など、自衛隊の役割を超えた救援活動が指示された。
 また、自衛隊員に対する活動期間中の処遇について、被災者の健康面の支援はもちろん大切であるが、同時に自衛隊員の健康配慮についても光を当てるべきである。そうでなければ長期にわたる支援活動が難しいものとなってしまう。また政府は、自衛隊員による継続的支援が可能なように、国民に対する説明責任があろう。
 外国の支援部隊・支援者との連携関係では、在日米軍には駐日大使を通じて正式な支援要請を行ったが、その他各国の支援部隊に対して、活動地域の指定や便宜供与がどの程度あったかは不明である。米軍についても、日米地位協定を準用したと思われるが、要請内容や行動時の権限等、および現地における統制・調整者の指定が不明確であり、これらは検討の対象となろう。
○福島第1原発事故における対応
 福島原子力災害における対応について、原子力事故の早期通報条約、原子力事故援助条約、原子力災害特措法、自衛隊法との関連で、これらの法的枠組みがどの程度機能したかを検討した。
 今回の原子力災害において一番問題なのは日本が「原子力事故の早期通報条約」と「原子力事故援助条約」を批准しているにも関わらずIAEAに対して通報を怠り、アメリカからの原子力冷却援助を無視したことである。この点について、IAEAからも遺憾の表明がなされている。また、原発事故当初の米国からの助言も活用されなかった。
 福島原発事故時に、原子力災害特措法に基づいて原子力災害対策本部が設置されたが、総理と対策本部長の権限関係が不明確であり、現地対策本部や原子力災害合同対策協議会は設置されなかった。また、法律規定がないとはいえ、東京電力との統合会議を設置したかどうか不明であり、原子力専門家を個別に利用していたが、統合運用の着意が見られなかった。
 自衛隊は、12日に原子力災害派遣命令が出され、14日に統合任務部隊が編成された。その後、陸海空共同対処から中央即応集団の一元対処となり、米軍の知見を活用できた。警察、消防、海保など関係機関との連携調整は比較的スムーズに行われたが、東電との連携については指示が不明確で、要請された注水処置は防災業務計画の枠外であった。また、現地調整所の統制指示や救援物資の輸送等についても今後の検討対象となろう。
○実施機関の教訓事項
 防衛省が出した「東日本大震災への対応に関する教訓事項」(中間とりまとめ)によると、発災直後の部隊集中要領に関する検討や、第一線部隊等の充足率向上等を通じたマンパワーの確保の必要性、また行政機能の低下した自治体が生じる状況下で、防衛省・自衛隊がどのような役割を担うべきかの検討の必要性などが指摘されている。
 しかし、このような震災後の支援活動を経てまとめられた教訓事項が現時点で防衛省(中間とりまとめ)以外にないのは問題である。少なくとも今回の震災後の対応から、@部隊の戦力を集中する段階、A指揮統制の問題、B現場での支援活動、C関係省庁、各自治体との連帯、D日米の共同の5つの問題が浮き彫りになったのであるから。今後この5点について具体的に教訓として取りまとめる必要がある。

 2回「防災と法」研究会

ホームへ戻る