「飛んで火に入る夏の虫」
政策提言委員・元陸自西方幕僚長 福山 隆 |
正気の沙汰か?
菅首相の意を受けた中井洽元拉致問題担当相が21、22の両日、中国・長春で、北朝鮮の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使と秘密交渉をしていたことが25日に発覚した。これについて、枝野幸男官房長官は26日午前の記者会見で、「確認したが、首相も松本剛明外相も中野寛成拉致問題担当相も『どこでこんなことを検討しているのか』という反応だった。まったくの事実無根だ」と白を切り続けている。
この秘密交渉疑惑と連動したもう1つの事実。菅首相をはじめ、民主党の国会議員や地方議員の資金管理団体などから、拉致事件で国際手配されている森順子容疑者(58)と、よど号ハイジャック犯の故田宮高麿元リーダーを両親に持つ長男(28)が所属する政治団体など 3 団体に、総額2億496万円もの政治献金がされていたスキャンダルが浮上している。
首相就任後、「想定外」の迷走を続ける菅政権の内外政策決定の軌跡を見れば、この疑惑は、限りなく真実ではないかと思わざるを得ない。正に、一国の宰相として「正気の沙汰か?」と言いたくなる。
民主党は「渡来人」の末裔が支配する政党か?
市民の会に対する資金提供は、菅総理はもとより鳩山前総理、鷲尾英一郎(拉致問題特別委員会理事)など6名の議員がいるという。また、外国人地方参政権付与に賛成している議員の中には、菅総理を始め小沢一郎前幹事長、鳩山由紀夫前総理、岡田克也幹事長、枝野幸男官房長官及び仙谷由人官房副長官など民主党の主だった議員が名を連ねる。
このたびの菅訪朝計画疑惑と併せて考えれば、民主党は「渡来人」の末裔が支配する政党ではないのかと疑いたくなる。
乞食国家の北朝鮮
韓国の対外経済政策研究院は今年1月、北朝鮮経済は今年も苦しい状況が続き、当分は低成長から抜け出せない、とする報告書を発表した。北朝鮮が新年共同社説で強調した「人民生活の向上」も、成果は乏しいと見込んでいる。
2012年は、北朝鮮の“建国の父”金日成の生誕100周年の年である。この年は 息子・金正日(ジョンイル)総書記が70歳を迎える年でもある。北朝鮮は今、この年を「強盛大国の門を開く年」として準備に懸命だ。このためには莫大な資金と、人民を慰撫する物資が必要だ。
北朝鮮は自らの力で、これらの資金と物資を獲得することは絶望的である。これまでと同様「乞食国家」として、中国はもとより日本、米国、韓国からせしめる以外に道は無い。
ところが、日米韓は現在対北朝鮮政策で足並みをそろえており、北朝鮮はかつてのように経済援助などを瀬戸際外交などでせしめることは極めて困難である。
「飛んで火に入る夏の虫」―菅総理を待ち構える金正日の心
そんな折、思っても見ない美味しい「獲物」が現れた。それが日本の菅総理だ。ありとあらゆる術策で、おびき寄せようとしていることだろう。その日本側エージェントが中井洽元拉致問題担当相、北朝鮮側の工作員が宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使ということになる。金正日は「しめしめ、獲物がかかりそうだ」と、ほくそ笑んでいたことだろう。
金正日は、筋金入りの曲者で、これまで超大国アメリカを相手に縦横の駆け引きを行い、翻弄し続けている。アメリカに比べるまでも無い日本の外交力、それどころか、外務省さえも蚊帳の外に置いた今回の北朝鮮アプローチには、唖然とするほか無い。
レームダック
菅総理は、政権浮揚という我執を満たすために、国益を蔑ろにして北朝鮮に摺り寄ろうとしている。
不信任案可決が決定的とみられていた菅首相は6月2日午後、採決直前に開かれた党両院議員総会で唐突に退陣の意向を表明した。菅総理は既に「レームダック」状態なのだ。こんな総理が北朝鮮と交渉しようとすれば、足元を見られ日本の国益を損なうのは火を見るよりも明らかなことだ。
菅直人政権が、8月中に日朝協議を行う方向で検討に入ったという。実現すれば、2008年8月の実務者協議以来3年ぶり。拉致問題や核問題が主要テーマというが、菅首相は退陣間近といわれているうえ、北朝鮮絡みの献金スキャンダルも直撃している。北に足元を見られないか。
外交は戦略性、タイミング及び与国との連携が重要
外交は、国民の信頼を得て磐石の政権が、周到な戦略を立て、関係諸国家と十分な連携を図りつつ、国際情勢などのタイミングを図りながらやるのが常道だ。今回の菅首相の対北朝鮮アプローチはそのいずれも不完全・不十分だ。そもそも発願・目的が保身であり、政権延命であることがそもそもの間違いだ。
また、誤った政治主導がここでも見られる。外務省当局抜きにこの問題をやるのは、危険極まりない。先の尖閣事件の際も、菅政権は特使として細野豪志衆議院議員を訪中させ、尖閣ビデオを公開しないとの密約をしたのも外務省抜きだった。
米韓は、日本のかかる動きを不信の念とある意味の軽蔑を持って見ているに違いない。同盟・友好国家の信頼がまたダメージを受けたことになる。
頭隠して尻隠さず
今回、菅総理特使の中井洽元拉致問題担当相は国家公安委員長当時、美人ホステスを頻繁に議員宿舎に連れ込み宿舎のカードキーも日常的に貸与したことで週刊新潮(2010年4月1日号)に暴露された。こんなプライベートも隠せないだらしの無い人物を、秘密工作のスペシャリストがてぐすね引いている北朝鮮当局との交渉・つなぎ役に据えること自体、パロディーのようなものだ。
アメリカのCIAやロシアのSVR (対外情報庁)及び 中国の国家安全部などが中井議員の動向の一部始終をフォローしていたことだろう。そして、今回のメディアなどへの情報のリークもこれら情報機関が介在していることだろう。
菅総理は国家の害毒、一刻も早く辞任せよ!
日本は今、日本をぶち壊そうとするグループにハイジャックされているのかもしれない――そう思えるほど、今の菅政権の所業は目に余るものがある。東日本大震災の復興や今回の外交の失点など、菅総理が居座れば居座るほど、その害毒は深刻化している。与野党はもとより、世論を結集して菅総理を総理の座から引きずり下ろすべきだ。
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