政治がさもし過ぎないか

.

政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 自分が上品な人間だなどというつもりは毛頭ない。だが最近の政治を見ているとあまりにもさもしいのではないかと思う。「さもしい」とは、心が卑しいとか品性がないという意味である。
 菅前首相が総務相時代に作った「ふるさと納税」もその一つである。「ふるさと納税」と言うが、自分の故郷に納税するわけではない。故郷でも何でもないところに、美味しい肉や魚などの返礼品をもらうために寄付をするという制度のことである。よくもこんなさもしい制度を考えたものだと思う。その分、自分が現に住んで教育や福祉、暮らしなどさまざまな面で世話になっている自治体への住民税が減額されるのだ。これはどう考えても“ふるさと裏切り納税”だろう。
 マイナンバーカードもそうだ。カードを作れば2万ポイントをプレゼントするというキャンペーンだ。たしか2年程前にも5千ポイント付与キャンペーンをやったが大失敗だった。“庶民は2万円もやれば嬉しくなって作るだろう”と考えてのキャンペーンなのだろうが、国民を舐めている。私のまわりでも作っている人は少ない。いまところ何の役にも立たないカードを作って落としたり、紛失したりするのが怖いからだ。私も出版社からの原稿料の関係で作ったが机の奥深くにしまってある。本当に役立つカードならポイントなどなくても作る。
 テレビを見ていても「○○ポイント」「●●ポイント!」という言葉がうるさいほど出てくる。私も行きつけのスーパーとドラッグストアのポイントカードは持っているが、年寄りにはこれが限界だ。まったくついて行けない。
 かつてのGo Toトラベルや全国旅行支援もそうだ。支援の費用はすべて税金だ。それがなぜ観光産業だけの支援なのか。観光関連や飲食店が打撃を受けていることは分かる。だがこんなことはしなくてもコロナが大丈夫ということになれば、国民の多くは観光や飲食に出掛ける。現にそうなっている。よくテレビに出てくる飲食店の店主は、少し苦しくなると“国の支援がないと”などと言っている。「甘えるな」と言いたい。コロナを理由にすれば、国から支援がもらえるということを当たり前にしては駄目だ。
 他の業態も大打撃を受けている。だがそこには支援はない。ただただばらまきをしているだけだ。ガソリン価格の高騰対策で1兆9千億円も投じたが、石油元売りに空前の利益を計上させただけだった。巨額の休業補償費が詐取され、雇用調整助成金でも巨額の不正受給が行なわれていた。こんな杜撰な財政運営は許されない。
 さもしい政治の極みが山際大志郎前経済再生相の人事だろう。旧統一教会問題で経済再生相から事実上更迭した山際氏を、その4日後には自民党の新型コロナ対策本部長に抜擢したのだ。自民党内からも異論が噴出しているという。岸田首相は「総合的判断」という曖昧模糊とした答弁をしていたが、それより驚くのは受けた山際氏だ。普通の感覚なら、辞退するだろう。時には見栄も、虚勢も大事だ。