「『桜を見る会』問題について」

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会長・政治評論家 屋山太郎

 「桜を見る会」を国会で追及しようという。こんなバカ話で会期をつぶせるわけがないと思っていたがようすが怪しい。朝日新聞は20日は朝刊2面トップ、21日はトップと社会面トップに加えて社説。23日も4面トップ、まだあるのかと思って読んでみると名簿を裁断したシュレッダーをいつ予約したのかといった話まで堕ちる。21日の社説は「首相の説明、信を置けぬ」というもので、「この会を巡って、連日のように新たな疑問や不審点が明らかになってくる」とまでいう。
 朝日新聞と野党の思惑は1万8000人の参加者の選別に怪しい点があるのではないか。首相関係者は約1000人らしいが、彼等の前夜の宴会が1人5000円というのは安すぎる。不足分を首相が補填したのではないかと勘繰る。首相の妻の昭恵氏は私人のはずで、夫人からの推薦もあったというのは首相による会の私物化ではないか、という理屈である。
 朝日は1人5000円の会費はホテル側が設定したというが「それを証明する明細書などは一切示されていない」と指弾している。あたかも野党に対して、追及方法を指示しているかのようだが、あの大朝日がここまで堕ちたのか。
 民主党が政権を取ったとき、小沢一郎氏は党内親中派を集めて訪中し各人を主席に会わせた。その時のメンバーは1人30万円を払った。「どうみても訪中3泊だから1泊につき10万円。こんな高い旅費があるだろうか」という人がいた。まとめて向こう側に渡ったのか、こちら側の政治資金になったのか。こういう汚い手を使う政治家は残ってはいるが、野党は自民党がまだこういう手を使って、政治資金を集めていると本気で思っているのか。
 私も毎年、ご招待をいただいているが、これまで参加したのはただの1回。理由は早起きに耐えられないこと。後援会の人を前夜に招いて会食し、翌朝桜見に参加とはうまいやり方だ。首相夫妻と並んで写真を撮るのは参加者にとって名誉になり、一生の思い出になる。首相夫妻のほか、外交官や芸術家など、日ごろ会えない人が山ほど集う。そういうところで邪魔をしてはいけないから私は知り合いに目で挨拶する程度で帰る。それが記者の礼儀だと心得ている。
 朝日の論法だとモリカケの時「妻は私人」と首相がかばったのを捕らえて今回夫人も推薦に関わったのは「会の私物化」だという。後援会の人を招くのに、夫人が口をはさむのは当たり前のことではないか。
 参加者の名簿がシュレッダーにかけられたという。選挙で自公協力の際、自民党側が極度に嫌がるのは、公明党に名簿を渡すことである。渡すと自民党側の人のところに行って選挙を依頼されるからだ。そんな大切な名簿を国会の場に出せというのは非常識極まりない。ホテルが価格をあかさないのは人によって値が違うからだ。それが商売のコツというものだ。国会が難癖をつけるところではない。
(令和元年11月27日付静岡新聞『論壇』より転載)