「広がるクール・ジャパン」
―訪日外国人による日本人古来の「武士道精神」の理解高まる―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 最近、日本株が上がりっ放しである。と言っても株式市場の話ではない。日本人の親切さ、丁寧さ、きれい好きなどに加えて、日本人の人柄がいいと褒めちぎられている。恥ずかしい。
 NHKの「クール・ジャパン」という番組で、外国人が良いところを褒めてくれる。日本人にとっては昔から持っている特性で今になって開発されたわけではない。
 大学時代、剣道をしていたが、勝って面を脱いだ途端、師範から竹刀で背中を思いっ切り叩かれた。その理由が、面を脱ぐ時、私がにっこり笑ったからだと言うのだ。負けた相手を慮って笑わないのが惻隠の情だと教えられた。
 先日テレビで橋下徹前大阪市長が舛添要一氏を迎えて「なぜ都知事を棒に振ったか」をテーマに語っていた。橋下氏は「贅沢な外国訪問をしたのはまずかった」などを指摘したのに対し、舛添氏は東京のイメージを上げるために超高級ホテルに泊まったのだと弁解した。支配階級の武士は汗を流さないのだから「質素に暮らさなければならない」というのは戦国時代からの徳目であって、都民が舛添氏に猛反発したのは野放図な税金の使い方に怒ったのである。
 政治記者の駆け出し時代は岸信介番から始まった。その後、池田隼人、佐藤栄作と官僚出身の総理大臣が続いたが、驚いたのは、官僚が実に小さな家に住んでいることだった。福田赳夫邸は歩くと廊下がミシミシいう家だった。官僚は武士の代わりに支配階級として登場したから、最初から武士道を心得ていたのだと知った。党人派の田中角栄氏は広大な邸宅に住んだからこそ金権腐敗の象徴となった。
 政治活動費をコソコソと使っている連中には政治を司る資格がない。
 占領軍は日本人を好戦的な野蛮人と捉えていた。彼等は玉砕するまで突っ込んでくる民族を理解できなかったに違いない。占領政策とは再軍備を永久に禁止し、教育内容を変え、民主主義を教えて民族の性根を変える方針を打ち出した。当時中学生だった私は父親に、教わったばかりの民主主義について話したところ、父親はカラカラと笑って明治の五箇条御誓文を持ち出した。「広く会議を興し、万機公論に決すべし、とある。今更、アメリカ人に教わる事柄ではない」と断じた。
 マッカーサー元帥も日本を統治するうちに日本人が特に好戦的民族ではないと認識したようである。1951年、上院でマッカーサーは「日本が太平洋戦争を始めたのは、日本の安全保障のためである」と証言している。今では日米安保条約を固くするために武装を強化しろとトランプ氏は叫んでいる。米軍のウォーギルト・インフォメーション・プログラムと名付けられた占領政策はとんでもない間違いだった。その方針で作られた憲法を今なお、守れと叫んでいるのは共産党だけだ。彼等は占領軍の代わりに日本に常駐している。
(平成29年9月27日付静岡新聞『論壇』より転載)