中国の海洋進出と対抗戦略

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東京国際大学国際戦略研究所教授 村井友秀

1、「偉大な中華民族の復興」
 中国共産党は2013年、「海洋強国に向け断固歩み出す」決意を表明した(『人民日報』)。中国は、東シナ海や南シナ海で海洋監視船、漁業監視船や海軍艦艇の活動を強化し、「多彩なパンチを繰り出している」(国家海洋局)。中国共産党の国家戦略の基本は、共産主義理論を実践し「世界の労働者が団結して世界の資本家を打倒する」世界革命ではなく、民族主義的熱情に裏打ちされた「外敵に奪われた領土と威信を取り戻す」(失地回復主義)である。
 中国共産党は中国本土を制圧すると同時に、朝鮮戦争に介入し、台湾海峡の島を攻撃し、チベットを占領した。60年代になると国境を巡って、インドやロシアと軍事衝突し、70年代に入るとベトナムから西沙諸島を奪い、更にベトナム国内に侵攻し「懲罰」作戦を行った。80年代には南シナ海でベトナム海軍の輸送艦を撃沈し、90年代にはフィリピンが支配していた島を奪った。中国共産党政権は戦争を躊躇する政権ではない。中国共産党にとって国境紛争のような小さな戦争は、平和時の外交カードの一つに過ぎない。
 中国共産党は、核心的利益である「固有の領土」を守るためには戦争も辞さないと主張している。それでは、中国の固有の領土とは何であろうか。「一度、中華文明の名の下に獲得した領土は、永久に中国のものでなければならず、失われた場合には機会を見つけて必ず回復しなければならない。中国の領土が合法的に割譲されたとしても、それは中国の一時的な弱さを認めただけである」(The Frontiers of China)。中国の教科書では、領土が歴史的に最大であった19世紀中頃の中国が本来の中国として描かれている。現在でも、「日本は中国を侵略し、琉球を奪った」(『世界知識』2005年8月1日)という主張が雑誌に掲載されている。
 中国共産党によれば、19世紀以降、帝国主義諸国が中国に対して侵略戦争を行い、広大な中国の領土を奪った。1952年に中国で発行された中学生用の歴史教科書(『中國近代簡史』)の地図によれば、次の地域が帝国主義諸国によって奪われた中国の領土である。