日米首脳会談後の 「次の一手」を考える

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政策提言委員・元航空支援集団司令官 織田邦男

はじめに
 トランプ政権発足直後の2月10日、初の日米首脳会議がワシントンで行われた。異例の好待遇だったフロリダでの「ゴルフ外交」を含め、先ずは上々の滑り出しと言っていいだろう。
 「親密化しすぎ」「対米追随」「朝貢外交」「更なる属国化」「難題封じ」等々、国内外で毀誉褒貶は色々ある。だが、多くは「やっかみ半分」「批判の為の批判」といった的外れの批判である。
 共同声明で「日米同盟及び経済関係を一層強化するための強い決意を確認した」と発表したことは今後、アジアの平和と繁栄に大いに寄与するものであろう。
 東、南シナ海で挑発行為を繰り返す中国、そして訪米中にもあった核・ミサイルの恫喝を繰り返す北朝鮮を目の前にして、日米の蜜月振りを見せつけたのは中朝両国に対し強いメッセージとなった。
 今後に持ち越した経済はともかく、安全保障に関しては、日本にとって予想を超える成果を得たといって良いだろう。核を含む「あらゆる種類の米国の軍事力」による対日防衛を確約させ、駐留経費問題の再燃を防ぎ、在日米軍の重要性を確認するだけでなく、米軍受け入れに「謝意」までを盛り込ませたのは安倍外交の勝利と評価できる。だが、「安保は満額回答」といって朝野をあげて手放しで喜ぶ日本の姿勢には些か危うさを覚える。
 ここで筆者が感じる危うさには2つのポイントがある。1つは中国による尖閣諸島に対する領有権争奪の動きはこれで終焉したかのような安易な安堵感と思考停止状態。2つ目は今後あり得る「トランプ氏の手のひら返し」に対する無警戒さである。

尖閣に対する中国の動きは封じ込めたのか
 先ずは尖閣問題である。安倍訪米に先立つ2月3日、ジョージ・マティス米国防長官が来日した際、彼は問わず語りに「尖閣は安保条約5 条の適用対象」と発言した。
 これをNHKがわざわざ「ニュース速報」を出して報じた。この報道姿勢に象徴されるが、国内では異様とも言える安堵感が広がった。記者会見における稲田防衛大臣の安堵と高揚感の入り混じった表情からも窺えた。ある評論家は「所領を安堵された御家人」のはしゃぎ様だと揶揄したが、筆者も同様の違和感を覚えた。
 忘れてはならないことは、尖閣を含め、我が領土、領海、領空を守るのは日本人であるという原点だ。この原点を忘れて同盟は成り立たない。日本人が血も汗も流す努力なくして、「第5条」など発動されることはあり得ないという現実だ。