安倍政権の対中政策

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

1.安倍政権の「アベノミクス」と「セキュリティ・ダイヤモンド」
 2012年12月、第二次安倍晋三政権が誕生して以来、この内閣は非常に安定している。
 最近の世論調査(例えば「報道ステーション」Poll―内閣支持率の推移―)でも、今年(2017年)1月29日現在、安倍内閣の支持率は、55.3%(不支持率27.5%)と高い。
 その理由は何か(それ以前の民主党<現、民進党>政権のパフォーマンスが悪かった事も関係しているだろう)。
 第1に、我が国経済が「アベノミクス」によって、それなりの成果を上げている。素晴らしい景気状況とは言い難いが、まあまあではないだろうか。日本は少子高齢化のためか、なかなか景気を浮揚させることは容易ではない。
 他方、安倍首相が、消費税引き上げ延期を決断したことも大きいだろう。2014年4月、安倍政権の下、消費税を5%から8%へ引き上げたが、その後、景気は落ち込んだ。元来、政府は2017年4月、消費税を8%から10%への引き上げを予定していた。だが、昨16年6月、安倍首相は消費税引き上げを19年10月へと延期した。英断である。
 財務省は消費税引き上げに拘っているが、たとえ消費税を増やしても、それによって全体の税収が減れば、歳入が減少する。それでは、何のために消費税を上げるのか分からなくなるだろう。
 第2 に、安倍政権は外交・安全保障に関して戦後歴代内閣中、傑出している。安倍内閣は、戦後、唯一、世界戦略を持つ内閣である。日本国民は、その点を認識しているかどうかは分からない。だが、薄々気付いているのではないか。一部の論者は、対中外交、対韓外交をもっと重視せよと主張する。しかし、彼らは安倍政権が別の観点から外交を行っていることに全く気付いていない。安倍外交は、中国大陸と朝鮮半島を包囲する布陣なのである。
 安倍政権は中国と韓国に関して、ドアを開けておく。だが、我が国が自ら両国には深入りしない方針である。これは、基本的に、福沢諭吉が唱えたと言われる「脱亜論」(1885年)と一致している。一言で言えば、当時、福沢は、清国や(李氏)朝鮮を相手にするなと説いた。慧眼である。安倍首相は、この主張を現代に蘇らせたと考えられる。
 まず、安倍外交の特徴として、「セキュリティ・ダイヤモンド」構想が挙げられるだろう。日本・米ハワイ・オーストラリア・インドを結ぶ自由と民主主義の国家群である。