アナーキーな世界においても日本は王道を歩め

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政策提言委員・ハーバード大学アジアセンターシニアフェロー 渡部悦和

 ジョー・バイデン米国副大統領(当時)は、2016年11月8日の大統領選挙の勝利以降もツイッターを使い問題の多い情報発信を繰り返すトランプ氏に対して「ドナルド、大人になりなさい」と諌めた。世界中の多くの人達も同じ思いであろう。
 「トランプ氏はツイッター依存症である」と指摘する人は多い。1月20日に正式に大統領に就任して以降もツイッターで不適切な情報発信を続けるトランプ大統領は、世界における不安定要因になっている。トランプ氏が米国の内政問題に関して何をツイートしようと「お好きなように」であるが、「メキシコとの国境に壁を作り、その費用をメキシコに払わせる」とツイートしメキシコを激怒させ、「NATOは時代遅れだ」と発信して欧州諸国を激怒させ、その矛先は日本にも及び「日本は為替を円安誘導し米国に打撃を与えている。トヨタ自動車のメキシコでの新工場建設は問題だ」などと不適切なツイートを連発している。
 トランプ氏が大きなリスクであるという評価は、イアン・ブレマー[1]の評価でもある。彼が社長を務めるユーラシア・グループ(Eurasia group)が、2017年の世界におけるトップリスク2017(TOP RISKS 2017[2])を1月3日に発表したが、2017年における最大のリスクはトランプ次期大統領の米国であり、第2のリスクがトランプ大統領の米国に対して過剰に反応する中国であると喝破している。経済的にも軍事的にも世界第1 位と第2 位の国がリスクと予想される2017 年は大変な年になりそうである。

米国主導の既存の秩序を自ら破壊しかねないトランプ大統領
 トランプ氏の大統領選挙勝利はパクスアメリカーナの終了を意味する。大国アメリカは、第二次世界大戦直後から、米国主導の世界秩序を構築して「米国による平和」(パクスアメリカーナ)を維持してきた。しかし、現在、多くの識者が「パクスアメリカーナは終焉を迎えた」と述べている。例えば、イアン・ブレマーは、自らのツイッターで「パクスアメリカーナは1945年から2016年11月8 日(注:米国大統領選挙でトランプ氏が勝利した日)までの間で、11月9日以降はG-Zero(ジー・ゼロ)の世界となった」と主張している。G-Zeroの世界は、ブレマーの著書[3]で紹介された世界で、「世界の諸問題を解決しようとする国も組織もない世界」を意味する。

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[1] イアン・ブレマーは、地政学的リスク分析を専門とする世界最大のコンサルティング会社ユーラシア・グループの社長(President)
[2] “TOP RISKS 2017: The Geopolitical Recession”, eurasia group
[3] “EVERY NATION FOR ITSELF Winners and Losers in a G-Zero World”