金正恩委員長は南侵の決断を躊躇しない
―南北の軍事衝突から日本人の命を守る対策を考察する―

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政策提言委員・軍事アナリスト 西村金一

はじめに
 金正恩委員長の頭の中は、危険すぎる。金正恩の異母兄の金正男氏が2月13日、マレーシアで、化学兵器の神経剤VXガスにより殺害された。北朝鮮特殊部隊偵察局の仕業としか考えられない。北朝鮮にとって不都合な人間は、次から次へと殺害・処刑する。それも国内だけでなく、国外滞在していた者も殺害した。1983年ビルマのラングーンで韓国大統領爆殺未遂事件と同様に、北朝鮮という国家が異様で不気味な国家であることを、改めて強く感じさせられた。
 北朝鮮は昨年、核兵器や弾道ミサイルの実験を頻繁に実施した。これに連動して、米国へのミサイル攻撃や韓国へのロケット攻撃の映像を流した。その内容は、今すぐにでも、弾頭ミサイルに搭載した核兵器を打ち込み、核戦争が勃発するかのような印象であり、北朝鮮がすぐにでも核戦争を仕掛けて来るような感覚に陥ってしまう。どうしてこのような感覚をもつのか。どうも、北朝鮮の国営メディアに引きずられて、宣伝戦・心理戦に踊らされているのかも知れない。
 南北の軍事関係を客観的に分析すると、直ちに核戦争が発生することはない。まず、小さな軍事挑発や軍事衝突が発生し、それらから南侵に拡大する。その進展が思惑通りに進まないことや、平壌が爆撃で破壊されるなど、不利な状況に陥ることから、金正恩が自国の体制崩壊の危機を察知した時に、核兵器を使用することになるのではなかろうか。従って、核戦争に拡大する以前に起こり得る可能性が高い。通常兵器による軍事挑発・軍事衝突の危機について、考察することが重要であろう。
 北朝鮮は、2011年12月「敵があえて仕掛けるなら青瓦台と侵略の根拠地を火の海にする」、13年3月「休戦協定を白紙化する」、15年3月「進軍してソウルを破壊する」と言及し、青瓦台(大統領府)にロケットを打ち込む創作映像まで放映した。南北の「休戦状態」から「朝鮮戦争の状態」に戻して、「いつでもソウルに進撃するぞ」と予想させる恫喝を行った。
 昨年(2016 年)10月頃から朴槿惠大統領退陣デモが繰り広げられ、北朝鮮は状況を静観していたが、デモが収まりかけた12月には、再び、北朝鮮特殊部隊が韓国の青瓦台を襲撃する写真を、国営メディアを通じて流した。今年に入ると、金正恩委員長は、新年の辞で、「大陸間弾道ミサイルの発射実験の準備が最終段階に入った」と述べた。