第153回
「米大統領選と今後の日米関係」

長野禮子
 
 
 令和3年初の開催となった1月7日、ロバート・エルドリッヂ氏を久々にお迎えし、先の米国大統領選挙と今後の日米関係についてお話し頂いた。 
 冒頭、エルドリッヂ氏は2020年米国大統領選挙をして「静かではないクーデター」という言葉を用い、民主党バイデン候補が重ねた得票の裏にある不正は事実との見解を示した。また今般の大統領選挙によって政治、メディア、警察、制度(投票・司法)、政府、裁判及び自国民の不信を買うこととなり、国内の分断は地域、階級、イデオロギーを超え、職場、友人、家族にまで及んでいると言う。こうした事態は過度のバイデン擁護・トランプ批判によって生み出される情報格差によって生じた。実際、エルドリッヂ氏は今回の大統領選挙はコロナ禍と組織的な不正に加え、メディア、IT業界等反トランプ勢力によってこれまで以上に現職大統領にとって厳しい戦いとなったと分析する。
 バイデン政権発足後の展開については、バイデン政権が正当性を欠き、民主党政権時のスタッフを再登用することを「リサイクルショップ」に準え、ハリス副大統領への花道を用意して短命政権になると辛辣に語った。仮にバイデンが健康問題を理由に1、2年で閑居した場合、ハリスが事実上10~11年もの間大統領権限を振るうことが可能となる。このことは就任後の米国社会に政治的無関心を促し、ローンや破産など一般国民の台所事情が悪化し、政治が混乱する事態を招くと言う。
 今後の米国政治は「3つの“I”」、即ち①Internationalist(進歩的な左派が集う、人民党)、②Interventionist(介入主義的でネオリベラル派が集う民主党)、③Isolationist(伝統的な孤立主義を尊ぶ保守派が集う共和党)―の3党に分かれるという大胆な予想を披露した。 
 最後に、日米関係の展望については、まず一連の米国内の混乱と低調な経済によって、日本は唯一の同盟国としての米国を失うことに加え、2013年12月の安倍首相の靖国参拝にオバマ政権が「失望」を表明したことでも明らかなように、米国民主党政権下で日本は国内政治においても難しい舵取りを強いられる局面が増えると予測する。尖閣問題や日韓関係といった重要課題においても、日本は米国からの支援を期待できないなど、長期的潮流で日本は不利になるというのだ。次第に日本国民はバイデン政権との温度差とバイデン政権に摺り寄る菅政権に違和感を覚えることになるだろうと語る。
 質疑応答では、今の分断された米国社会の「Unity(一体、統一)」が出てくるのか乃至は今後も続くのかとの質問に、エルドリッヂ氏曰く、そもそも米国社会において「Unity」は幻想に過ぎなかったのではないか、と思い始める米国人が増えているという。このことは一部の余裕のある米国人にとっては見えていたが、そうではない人々も「Unity」をイメージできないことを知ってしまったのではないか、と言うのだ。バイデン自身が「1994年暴力犯罪統制及び法執行法(所謂、クライム法)」でアフリカ系米国人を社会復帰から排除する意図で法案を提出した張本人であることから、国家の「Unity」を彼に期待することは見当違いだと言う。  
 奇しくも今回の「Chat」当日(日本時間1月7日)、ワシントンD.C.ではトランプ大統領支持者と見られる人々が連邦議会議事堂(Capitol Hill)に乱入し、一時占拠した。20日の大統領就任式を前に死者を出したこの“超非常事態”は、バイデン当選を正式に認定する上下両院合同議会が中断する事態に陥った。民主主義の殿堂とも言える場所で発生したこの前代未聞の事態は、自由・民主主義の盟主たる米国の醜態となった。同時に、2020年の選挙結果による米国分断、更には間もなく就任を迎えるバイデン民主党政権の進む道がいかに「茨の道」であるかということを象徴する出来事であったと言えよう。こうした混乱を尻目にほくそ笑むのは更なる覇権を目指す中国である。
 この新時代にあって日米の強いリーダーシップと日米豪印(Quad)に加え、英、仏、独との一層の連携強化に期待したい。
テーマ: 「米大統領選と今後の日米関係」
講 師: ロバート D. エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・政治学博士・元在沖縄海兵隊政務外交部次長)
日 時: 令和3年1月7日(木)15:30~17:30
ø