1、6月2日、菅内閣不信任決議案が否決された。決議案が可決され首相による解散・総選挙となれば最善のシナリオだったのだらうが、仮に可決されて内閣総辞職の場合にはどうしたのだらうか。未だに疑問が残る。
いづれにせよ、不信任案は否決され、その直前に菅首相は退陣(?)を表明した。これが不信任案提出の唯一の成果と云ってよいであらう。
しかし、退陣後の政局がどうなるかは未だ混迷が続いてゐる。
1、一方、首相の退陣(?)表明とその後の記者会見をめぐって、民主党内では、前代表の鳩山が現代表の菅首相を「ペテン師」と罵るなど、開いた口が塞がらない醜い内ゲバを続けた。しかし攻撃する鳩山自身が、かつてオバマ米大統領に「トラスト・ミー」と語りながら、当日夜にはシンガポールで前言を翻したり、首相辞任に際して政界引退を公言しながら、いつの間にか撤回してしまふなど、詐欺的行為は枚挙に遑なかった。2人とも同じ穴のムジナではないか。民主党の体質かも知れない。
そもそも民主党には「綱領」がない。もともと立党の最初から「政権交替」以外には目的がなかった政党である。その目的であった政権交替が実現した結果、今度は「政権維持」のみが目的となってしまった(これは自民党凋落の原因と同じである)。今回の菅・鳩山合意で、民主党を「壊さないこと」「自民党に政権を渡さないこと」の二項目が震災や原発対策よりも上位に書かれたことは、その証明である。
それ故に、実行しようとする政策がない。その上、事務局を旧社会党最左派(協会派)に抑へられてゐるから、打出される政策は大衆受けのするバラマキ・マニフェストと左翼色の濃い反日政策になってしまふ。一昨年来の政局混乱や日本の国際的地位低下は、このやうな政策不在の民主党の体質に基因してゐる。いづれにしても「政党」の体をなしてゐない烏合の衆であるから、速やかに解党し、政界再編を行ふ必要がある。
1、今回の東日本大震災や原発事故に対する対応の失敗も、菅首相の個人的性格もあるが、民主党のこのやうな体質が災ひしてゐる。
第 1 の誤りは「政治主導」のはき違へである。本来政治主導とは、政治家が国家の基本方針を示し、その具体化に当っては行政組織を活用、統率することである。然るに民主党は「政策なき政権交替」と同様、政治主導とは官僚排除のことと誤解し、政治行政すべてを政治家が行ふとして官僚バッシングの風潮に迎合した。その結果、行政組織は麻痺し、官僚は自ら企画献言することを止め、専ら上からの「指示待ち」の姿勢となり、各省間の連絡調整は途絶してしまった。そのため重要事項についても十分な事務的検討が行はれることなく欠陥だらけの法案が成立したり、閣僚が思ひ付き発言を繰返したり、閣内不一致が頻発したり(以前ならこれは内閣の命取りであった)することになった。
その結果は対外的にも国際的信用(民主党はこの重要性すら意識してゐない)を失墜する。例へば、鳩山の国連総会におけるCO²25%削減の公約とか、先月のG8における菅の自然エネルギー20%発言とか、太陽光発電1千万戸の公約などすべて事務的検討のない首相の思ひ付き発言にすぎない。 世界は日本の首相の発言を信用しなくなるのは当然であり、それがいかなる結果をもたらすかの自覚すら民主党にはない。
第2は、前記と関連するが、責任感の欠如である。鳩山の「トラスト・ミー」発言や「最低でも県外」発言も然りであるが、菅もまた尖閣事件に際して一切の責任を一地検に押付けてしまった。
今回の震災復旧の遅れについても、国の責任は示されないし、原発事故についても一切の責任を東電に転嫁しようとする(今回の事故原因が「非常に巨大な天災事変」である以上、東電は免責さるべきではないか)し、浜岡原発についても停止の責任を中電に押付けてゐる(中電はこの大震災後に保安院の検査を受け合格の保証を得てゐたにも拘らず、だ)。
この無責任体制は、官邸にやたらに設けられた対策会議や対策本部が相互の関係や権限が不明で混乱を招くことによって益々甚だしくなった。緊急時の対応原則は、できるだけ上下間の結節を少くも、現場の裁量権を拡大し、その最終責任は指揮官が執ることにあるが、民主党政権は全く逆のことを行ひ、しかも官僚ないし官僚 OB を悉く排除して政治家だけですべてを決して、その責任は現場に取らせようとするのだから、組織が動く筈はない。
6月6日付日経紙に芹川論説委員長が「この国をどうする気ですか」と題して、政治主導の失敗は民主党政権の幹部に「組織運営の経験のないメンバーが多いこと」が原因ではないかと分析してゐる。「市民運動家、弁護士、松下政経塾といった出身者」は、「人前で解説、説明することにはたけていても、人を動かす人情の機微にはうとい。」何より不思議なのは、「事前の根回しなどしないでいきなり会議でものごとを決めようとすることだ」と述べてゐるが、まさにその通りであらう。
第 3 の問題はより重大である。外交、安全保障問題である。国内政治の問題は政権の運命限りで済むが、こと外交、安保となれば国家の運命を左右する。
民主党にはそもそも国家意識が欠如してゐる。国家主権の重大性についての感覚が希薄であり、国家の権威或いは名誉についての認識がない。
鳩山前首相は印度洋の海上自衛隊を撤収させ、普天間で迷走して移転問題を修復困難にさせ、日米同盟に大きな亀裂を生じさせた。この傾向は菅内閣に於いても変ることなく、日韓併合百年の昨年、無用有害の首相談話を発表して国家の歴史と名誉を傷つけ、貴重な遺産を無条件で他国に譲渡する協定を締結(今国会で成立)した。さらに、重大な主権侵害である北朝鮮の邦人拉致事件を放置し、中国漁船の尖閣沖領海侵犯と公務執行妨害犯罪に対し犯人の船長を一方的に釈放し、我が国固有の領土である北方領土にロシアの大統領以下各閣僚が不法上陸したことも放置した。また、竹島に韓国が巨大な施設を着工することを黙認し、韓国国会議員が我が北方領土に不法上陸したことに対し首脳会談で何らの抗議も行はなかった。
いづれも我が国益を毀損し、近隣諸国に乗ずる隙を倍加させ、親日のアジア諸国を失望させた反国家行為であった。
防衛計画の大綱を改定したと云っても、自衛隊定員を削減し、防衛費を減額して我が国防を弱体化させてゐる。今回の震災に対しても 2万、5万、10万と日毎に派遣人員を増加させ(このやうな指示は首相が上から行ふべきではなく、兵力規模の策定は自衛隊に委ねるのが当然である)、その間、国防上の配慮は全くなされた形跡がなかった。そもそも総員23万人の4割以上を災害派遣に割くのであれば、当然安全保障会議を開催すべきであるに拘らず、未だ実行されてゐない。
いづれにせよ、民主党に外交、安全保障政策を担当する能力がなかったことが明白となった。
1、以上の如く民主党政権の持続は許されざることであるが、さらに第4の特色としてその反日的性質を特記しなければならない。
前述の通り菅政権は昨年8月、日韓併合に関して恐るべき歴史に対する無知と歪曲を敢てして国家の尊厳を毀損したが、大震災後に於いてもこの種の行動は継続してゐる。
政治の中心が震災と原発事故の対応に集中してゐたさ中の4月22日、衆議院で「日独修好百五十年」の決議が行はれた。しかし、その内容は原因も目的も全く異る両国の戦争を同一視し、両国ともこれを反省してゐると独断し、史実に反する内容まで記した全く無意味かつ国辱的な決議であった。
その経緯については「正論」7月号に高市早苗代議士が「大新聞が書かない日独決議の舞台裏」と題して眞相を曝露されてゐるが、許し難いのは震災対応のドサクサに紛れて、このやうな反日決議を強行しようとした民主党の体質である。
のみならず、最近でも曰く付きの「人権侵害救済機関法案」を提出すべく、党内PTで作業し、次期国会に提出予定だといふ(6月9日各紙)。この法案は民主党の公約でもあり、既にこの3月、仙谷前官房長官が部落解放同盟全国大会において、マニフェストでも採上げてゐるので必ず成立させると挨拶してゐるといふ。
この法案は、法務省の外局として独立の3条委員会を設置し、人権侵害の調査、救済に当たらせようとするものであるが、「人権侵害」の定義も明確でなく、民間人(人権派団体の代表も当然含まれるらしい)で構成する委員会に、令状なしの調査、勧告権限を与えようとするもので、司法権の独立を紊すのみならず、左翼陣営による言論弾圧機関となる危険性が大きい。
自民党政権時代に党内の反対によって中止された経緯があるが、改めて意欲を燃やしてゐるのが民主党である。その意図は、人権救済の目的ではなく、専制権力を定着させることを狙ったもので、法治国家、民主主義制度の否定と云ってよい。
関連して、人権救済を直接国連機関に提訴することを認める条約の批准も意図してゐるといふ(読売紙)。これも最高裁の権威を否定し、司法権の独立を脅かすのみならず、国家主権そのものを侵害するもので、ここにも民主党の左翼体質が表れてゐる。
何よりも重大なことは、皇室に対する尊崇の念の希薄さである。今上陛下御即位20年記念日を祝日にする法案に反対して実現させなかったのも民主党(小沢一郎の反対)だし、習近平中国副主席来日時の鳩山内閣の不敬行為、小沢幹事長の不敬発言も許し難いが、今次震災に際して賜った「お言葉」のビデオ放映(昭和20年以来の玉音放送である)に対する菅内閣の取扱いぶりも礼を失するものであった。
枝野官房長官に至っては今上陛下が第何代の天皇に当たられるのかも「知らなかった」といふ(参議院答弁)。この一事だけでも政権担当の資格なしと云ってよかろう。
1、以上、どう考えても民主党政権の存続は1日長ければそれだけ国益を損ずる。
1、菅首相は懸命に延命を図ってゐるが、客観情勢は早期退陣に傾いてゐるやうである。退陣表明後、誰が後継者となるかは分からないが、上述したやうな体質は変るだらうか。
民主党にも良識派はゐるから、何とか日本国民の政党に変って欲しいと思ふが、恐らく難しいのではないか。
一部に期限を切っての大連立が囁かれるが、バラマキ政策の廃止をはじめ、大転換が起きなければ無理であらうし、また体質の異る政党が連立を組むべきではない。
しかし、民主党退陣後の政局も、受け手である自民党内がバラバラでは決して安定しない。眞正保守を中核とする政界再編が切望される所以である。
問題は、どのやうにすれば解散、総選挙に持ち込めるかの戦術を練る必要があるとともに、前記批判した民主党の政策に対し、対決姿勢を明確にすることである。与野党間の対立点が明確にならなければ国民は選択することができない。 特に、憲法、外交、安保、教育等の国家の基本問題に対し姿勢を明らかにしなければならない。
なほ、注意すべきは、現状のまま推移してゐる間に、国際情勢は一瞬の休みもなく動いてゐることである。各紙報道の通り、中国の新鋭艦8隻が6月8日に、続けて3隻が6月9日に宮古島沖を通過して太平洋に向った、南支那海の航行自由の問題、或いはオマーン沖の海賊の跳梁など、我が国周辺は決して安泰ではない。与野党とも注視を怠らず万全の対策を検討しておくべきである。特に、領土問題については一歩も譲歩してはならない。
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