理事・政治評論家
 屋山太郎



  

野田首相に告ぐ
財務省洗脳政治からの脱却を図れ!!
 
 野田内閣が誕生してから80日が経つ。本来政権への批判は3か月の蜜月が終わってからということになっているが、大きな路線が敷かれてしまって、脱皮とか脱線の余地がなくなってしまっている。歩いている路線はどう見ても「財務省内閣」路線なのである。
 野田首相が断行したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加は、日本にとってはまさに一本道である。直面する最大の問題は農業だが、これはTPPがあろうがなかろうが避けて通れない問題で、国民の支持もある。
 次に野田首相が強調しているのは「年金・税の一体改革」で、首相は何が何でもやる構えのようだ。麻生内閣時の所得税法改正附則に「経済状況を好転させることを前提として」「平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずる」とある。当時の民主党は「今重要なことは道路歳出の無駄の排除、天下りの根絶など徹底的な歳出改革を行うことであり、消費税ではない。」(平成21年3月27日、喜納昌吉、参院財政金融委)と強硬に反対している。当時の民主党の主張は国民の共感を呼んで、その後の民主党の大勝に繋がっている。
 消費税にこれほど反対していた民主党なのに菅、野田と2代にわたる首相が洗脳されてしまっている。財務官僚は菅氏を説得するのに3ヵ月、野田氏に3週間、安住財務相は3時間でコロリという陰口があるほどだ。
 天下り根絶については麻生政権時代、理事の天下りは5割にとどまっていたが、民主党時代になって5割超となった。民主党は天下り監視委員会の人事も決める気はない。官僚との蜜月を壊したくないらしい。
 最近、官僚政治を脱却する狙いから、古川元久国家戦略担当大臣が「国家戦略会議」のメンバー(野田首相ら13人)を決めた。この会議は小泉首相が竹中平蔵氏に経済財政諮問会議を担当させ、「予算編成の基本方針」を打ち出したのに倣ったもの。当時は内閣設置法に基づいて行ったが、今回はどういう訳か「閣議決定」という段落で設置された。しかも古川氏が国家戦略会議の人選に動きだしてから、財務官僚が古川氏を野田首相に2ヵ月も会わせなかった。この結果、国家戦略会議は予算編成策定の大方針に関わる時間的余裕がなくなってしまった。予算については外部から触れられたくないという財務官僚の魂胆が見え見えなのだ。
 増税方針も来年度予算編成方針も財務省通りなら、民主党が総選挙で訴えてきたことの何ができるのか。
 公務員宿舎などは全部無くして当然の代物。それを朝霞の宿舎建設を5年凍結するという。
 独立行政法人印刷局をどういうわけか、財務相の直轄とした。膨大な国有地を抱えた印刷局は焼け太りもいいとこだ。政治家が財務官僚の意向に配慮しつつ政治をやっているが如くだ。
 国民は官僚が特権を持つことに反感を覚えている。年金の格差しかりである。企業年金は本人5割、使用者5割なのに国家公務員は本人4割、税金6割で、給付は厚生年金より月に2万円高い。地方公務員に至っては3万円も高い。民主党は年金の格差解消を叫んできたが、何もしていない。この是正には全く金がかからないのだ。
 地方分権についても、本来、不要のはずの国の出先機関の建設を決めるという暴挙を認めた。首相よ、財務省が言わないこともやってくれ。

                                                                                                                                     (11月23日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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