理事・政治評論家
 屋山太郎



  

「石原新党」立ち上げの障害
―ハードル高過ぎる3氏の政策、イデオロギーの壁―

 「石原新党」を3月を目途に立ち上げようと云う。旗を振っているのは亀井静香国民新党代表で、代表代行に平沼赳夫たちあがれ日本代表を据える布陣だ。石原新党が亀井氏の思惑通りに行くと70〜80人の集団になり、自民党が与党であれ、民主党が与党であれ、政界のキャスティングボートを握ることは確実だ。今のところ「敵には廻したくない」との思惑から、民主も自民も敵意は見せていない。両党の不満分子や第3極は糾合されることを望んでいるようだ。ものになるのか。
 石原慎太郎氏は当初「もう79歳だよ」と言って新党構想に乗る気を見せなかった。しかし「国家のため」と云う殺し文句で当分、亀井氏の動きを黙認するという了解ができたようだ。石原氏が代表なら、代表代行に平沼赳夫氏も文句はない。亀井氏は幹事長になる積りだが、3人とも70歳超の老齢である。
 そこで石原氏が目をつけているのは大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長である。両人は「中央集権という統治構造を壊さなければ日本の再生はない」と思う点で一致している。愛知県の大村秀章氏も味方に加えようと云う。
 石原、平沼、亀井を頂点とした新党が誕生するには、イデオロギーの違い、政策目的の違いなど、越えなければならない問題が多い。ハードルが過ぎるのだ。
 石原、平沼両氏はTPPに賛成だし、消費増税もやるべしと考えているのに対して、亀井氏はいずれにも反対だ。にもかかわらず亀井氏が石原氏を担ぐのは、実に旧弊な派閥人間だからこそだ。派閥は人情で繋がり、子分は親分の意見に従う。多くの土建会社を共存させるために、談合は許される。景気対策のためには30〜50兆円の公共事業をバラまけという。古い体質の自民党の“思惑”が染みついているから、小世帯の国民新党の中でさえ、浮き上がっている。
 石原氏が望みを託している人物は、橋下徹氏だ。大阪ダブル選挙の時に応援にも行ったし、橋下氏も石原氏に敬意を払っているが、“亀井込み”なら敬遠したいところだろう。橋下氏の政治手法は問題点を暴き出して、それをスピーディに解決することだ。そのための弁舌も喧嘩手法も論理の組み立ても抜群の旨さだ。石原氏も橋下氏の正攻法に惚れ込んだのだろう。
 橋下氏が求めるのは公務員の規律と教職員の政治的中立で、これには石原氏も満腔の賛意を示している。石原氏も「教育問題は破壊的に変えねばならない」 と云う。3回以上処分された教員は免職するという条例を維新の会は府議会にかけている。
 橋下氏は大阪都構想、公務員問題、教員問題の3つを突破する努力を糾合しようとしているのだが、今のところ信用して任せられる党は存在しない。地域主権を唱えるみんなの党は「維新」との連携姿勢を明確にしたが、合併までは考えていない。となると他の第3極は皆、同床異夢。まとめたいのは亀井氏だが、皮肉にもそれが最大の障害なのだ。

                                                                                                                                     (2月1日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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