理事・政治評論家
 屋山太郎



  

橋下「維新の会」大阪を変える
―教育基本条例・職員基本条例、そして教育委員会廃止へ―

 橋下徹氏の手になる教育基本条例が職員基本条例と共に大阪府議会に提出された。両条例に共通するのは教員・職員について、上司が5段階の相対評価を義務付けていることだ。この勤務評定は教員や職員の職業に対する忠誠度を格段に高いものにするだろう。
 地方公務員の職員は自治労に属し、教員は日教組に属している。職員も教員も“政治活動”は公務員の中立性に悖るために禁止されている。しかし現実には選挙となれば自治労、日教組が選挙マシンとしてフル稼働するのが常だ。どうしてこういうことになったのか。人事権は実態として組合が握り、当局は政治活動があったことを立証するのが難しい。日教組が教育制度の核心を握っているのだ。
 両条例が可決されると当局と組合の力関係が逆転するだろう。上司の相対評価が実行され、最低ランクの評価を受けた職員や教員で2年連続最低を取ると指導研修。改善しないと判定されれば分限免職・降格される。これまでは労組の忠実な組合員であれば昇給、昇格は組合に保証されていた。当局なんぞは全く恐くないのである。かつて国鉄の職場が堕落し切っていたのは「サボリこそ組合闘争」という倒錯した論理が職場にまかり通っていたからだ。分割・民営化になったあと、だらけ切った職員がなぜ蘇生したかと云えば、当局の勤務評価が通用することになったからだ。
 橋下氏の残した両条例は、いずれ市議会にも提出され、総選挙の公約として、「立法化する」という。民主党は大打撃を受けるだろう。
 橋下氏のもう一つの悲願は教育委員会の廃止である。文科省の法解釈では首長は選挙で「教育を熱心にやりましょう」程度の目標を言うのはいいが、具体的に学力テスト、中高一貫教育などは言えない。これは教育からの政治的中立を保つためだと言う。橋下氏は首長が教育について具体的なことを言うのは当然で、「バカ文科省」の言う方が間違っていると食いついている。
 占領軍は教育を中立化するために、様々の権威の分散と政治から距離を保つ策を残した。その典型が教育委員会の仕組みだ。教育委員は通常5人で構成され、任期はそれぞれ4年だが、毎年1人ずつ交代することになっているから、全員が一挙に交代することはない。5人のうち1人は教育長で、4人は素人。教育長は首長部局の教育の専門家。4人は素人だから、議論を引っ張るのは教育長。かといって3人が反対すれば何事も決まらない。
 橋下氏は教育レベルの向上のため、既に小・中の学校給食を開始、府立高校の学区制廃止、所得650万円以下の子弟が私立高校に通う場合の学費援助などを開始した。いずれも選挙中は「公約」として打ち出せなかった。教育委員会制度自体も無責任体制そのものだ。沖縄の竹富町などは教科書を決める学区協議会で決定済みの「育鵬社の歴史教科書を使わない」と頑張っている。この一事をもってしても教委制度は廃止すべきものだ。

                                                                                                                                     (2月29日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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