安倍外交の基本を貫け
―国際的価値観から外れている中韓の「東夷」外交―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 自民党の二階俊博総務会長は「尖閣や靖国問題は一時棚上げする」とか「慰安婦の弁償問題を横におく」とかしないと「日中、日韓の首脳会談は実現しない」としばしば強調している。同様に福田康夫元首相も習近平国家主席と密かに会談し、日中首脳会談の下準備をしている風である。
 二階氏や福田元首相の思惑は首脳会談をやって何とすべきかという新しい課題は示されていない。「会うことに意味がある」という考えのようだ。この路線を貫くと「会って貰うために、靖国も尖閣も慰安婦も譲らざるを得ない」という出口なき洞穴に突っ込んで行くことになる。田中角栄氏が尖閣で騙された、中曽根康弘氏が靖国で失敗した。宮沢喜一氏などは慰安婦問題に引っかかった。
 古来、日本は朝鮮半島も含めた中華圏との付き合い方に苦労してきたのである。冊封国家になりそうになって腹を決めた聖徳太子が607年、隋に書を送って“対等外交”を宣言した。中国から見れば日本は「東夷」であって、家来になるか滅ぼされるべき国だ。その“中華思想”は現在でも全く変わらない。日本の同盟国米国に対して「太平洋を半分ずつ分けよう」とか「二国間大国関係」「G2」などと持ちかけている。米国がウンと言えば、いずれ日本は中国の傘下か冊封国家にならざるを得ないだろう。
 安倍外交はこういう外交的岐路を見据えて“異質の中国”と一線を引く戦略を打ち出したのである。第一次安倍内閣では自由、基本的人権、民主主義で「価値を同じくする陣営が固まろう」という価値観外交を展開した。今回は異質の中国を取り囲む形の「地球儀を俯瞰する外交」「積極的平和主義」を掲げている。国内の猛反対を押し切ってTPPに入った。これも知的財産権や国有事業の扱いで、全く異質の市場である中国と対等の付き合いはできないと判断したからだ。
 中国の膨張主義は何千年もかけて伸び続けている。まさに異形の国である。韓国が米韓条約がありながら、中国に呑み込まれているのは1500年に亘る中国の属国だったDNAのしからしむところだ。
 安倍首相は表向きに「中国排除」とは言わないが、世界は朴槿恵大統領のあの「告げ口外交」を見て、韓国がどのような国か、また安重根の記念館を造ってやった中国の思惑もわかってきた。
 一方で安倍首相は世界中、すでに50ヵ国以上を歴訪した。ASEAN諸国は改めて日本への信頼感を示している。彼らはまさに近隣諸国だから中国のやり口をわかっている。
 南沙(スプラトリー)諸島で中国が支配している6つの岩礁をつなぐ人工島化が進行し、飛行場を造るものとみられている。
 尖閣諸島にはかつて、日本のかつお工場があった。中国が欲しがり出したのは石油埋蔵が明らかになった70年初頭のことだ。中国には寸土たりとも譲らない原則を貫く必要がある。韓国には慰安婦を叫び続けさせればいい。


(平成26年10月29日付静岡新聞『論壇』より転載)

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