橋下氏、新たな取り組み始まる
―民主党連携派議員との決別、第2極を目指す―

 
理事・政治評論家  屋山太郎 

 橋下徹大阪市長が動き出した。橋下氏はかねてから松野頼久代表、柿沢未途幹事長らの民主党すり寄り路線に不満を抱いていた。「民主党は悪い政党です」と維新の党の生みの親が言うのだから、執行部が民主党との連携を進み続ける現状をよほど不満に思っていたのだろう。
 自ら指揮を執れない立場にあるため、「最高顧問」と祭り上げられて、党は自らの意向に逆らって進む。将来の政治日程を考えると、この辺で「この舟を降りた方がいい」と判断したようだ。政治日程を見ると9月27日が国会の会期末、10月1日が維新の党代表選告示、11月1日が代表選開票、5日が大阪府知事選告示、8日が大阪市長選告示、22日が知事・市長選投開票。来年の7月が参院選となっている。
 橋下氏は知事、市長のダブル選挙に全力を上げ、新たな「大阪都構想」を問うと言っている。一方で11月22日の開票日を待っていては来年の参院選に向けて目ぼしい候補を見つけるのが大変だ。あるいはダブル選挙があるとすれば、衆院選に向けた候補も必要だ。
 7月の参院選に立つ手もあるが、それを見送って時期衆院選を狙うのではないか。
 橋下抜きの維新の党は集票力が極度に減るだろう。橋下氏は1人で衆院800万票41人を当選させた実力がある。府知事、市長を兼任してこの業績である。党首になって死に物狂いになれば「第3極を狙う」どころか、第2極になる可能性もある。目下のところ橋下側に残るのは近畿出身の10数人と言われているが、他県出身者でも当選を確保したい思いで橋下傘下に来るのではないか。
 橋下氏が府知事になって実感したのは日教組と自治労の政治力である。教育基本条例、職員基本条例の制定では日教組と自治労とに真っ向からぶつかった。橋下氏が労組に支えられる民主党と仲良くできるわけがない。安倍首相や菅官房長官も橋下氏が国政に出てくれば、「何でも反対」の野党とは違う第2極が誕生すると期待している。
 現代表の松野氏、前代表の江田憲司氏、柿沢幹事長らは民主党との連携派で、新安保法案の採決では反対に廻りたい思惑だ。一方、橋下氏は自公原案の本質を守りつつ、与党と妥協できる改正をしたい。そうなると新安保法制は自公の強行採決で成ったとは言われず、維新、次世代の共同案ということになる。大阪の都構想をめぐる住民投票に官邸から強烈な応援が発せられたのも、いずれ維新が第2極になることを期待しているからだ。
 民主党が落ちぶれたのは相変わらず @安保反対 A連合の応援――に世論が離れたからだ。民主党はこの2つの基本政策を転換すれば、あれほどの没落は喫しなかったろう。前原誠司氏や細野豪志氏らの発想は橋下氏と通ずるものがある。しかし岡田克也代表は規定路線のまま数を増やしていけると思っている。松野氏も同様の発想だが、橋下氏は民主党と合同する時には民主の2原則を変えることを条件とするはずだ。



(平成27年9月2日付静岡新聞『論壇』より転載)

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