326日ノドンミサイル発射に関するコメント
政策提言委員・軍事アナリスト  西村 金一

1.ノドン発射状況
報道によれば、北朝鮮は26日午前2時35分と同45分の2回、射程約1,300キロとされる中距離弾道ミサイル「ノドン」とみられるミサイルを発射した。ミサイルは朝鮮半島を横断して約650キロ飛び、半島の東約500キロの日本海に落ちた。

2.軍事アナリスト西村コメント
日米韓の三者会談に焦点をあて、3カ国を牽制する狙いであることは間違いない。

軍事的なコメントとしては、以下のとおり。
@ 日米韓の三者会談に焦点をあて、3カ国をけん制する
A 米韓軍事演習への対抗措置
*どちらかといえば@の公算が高い。その理由は、三者会談の時間にあわせていること
 米韓軍事演習の対抗措置であれば、北朝鮮は、「発射するぞと予告を出す」「偵察衛星に発射の動きを見せて威嚇する」などの動きをする。これまではそうしてきた。
B その他の理由はあるか
朝鮮総連本部の建物の売却について、その反発も考えられないことはないが、公算としては、かなり低い。この場合であれば、弾道ミサイルを発射するという脅しだけで十分である。

【軍事的重要性】
@ 今回の発射は、ミサイル実験場からの発射ではなく、ノドンの実戦配備基地(サイロ)からか、あるいはその基地から移動用車両(TEL)を使って移動し、発射したものと思われる。発射基地は、おそらく平壌北部の新五里(シノリ)のノドン配備基地あるいはその周辺であると思われる。
A 実践配備のミサイルの弾頭(頭部)には爆破薬が詰められていて、実験用弾頭の中身が「からっぽ」の弾頭とは異なる。実戦用のミサイルである。
B 日本、韓国および米国に、発見されずに、発射の兆候を掴まれずに、いつでも日本、韓国、在日米軍等に「撃てるぞ」という能力と意思を見せつけたものである。
C 日本、韓国、米国としては、北朝鮮の弾道ミサイルがいつでも向けて飛んでくる、という脅威を感じた。近い将来には、弾道ミサイルに核兵器が搭載される脅威がある。

【防衛省の対応】
@ 防衛省は、発射実験場(ムスダンリやトンチャンリ)からの発射の事前情報は入手できるが、発射サイロから移動用車両(TEL)で移動して、夜間の間に液体燃料を注入して、数時間で発射する場合には、情報を捕まえることが難しいのではないか。
A 実験用のミサイルの発射情報は取れるが、実戦配備のミサイルの発射情報はとれないのではないか。
B ノドンが発射されるのに、国民に対し、警告が発せられなかった。
C 日本、韓国は完全に奇襲されてしまった。

【北朝鮮は思いつきで実施したのか】
@ 北朝鮮は金正日総書記の時代には、思いつきで行動を起こすことはほとんどなかった。考えて計算して行動するのが北朝鮮だ。核兵器や大量破壊兵器の交渉などを見ていてもわかる。
A 金正恩政権の動きでは、思いつきの判断、誤った判断だったかもしれない。いまのところどうなのかは判断できない。

【最新型のミサイルを出してこない理由】
この裏には、新たたな弾道ミサイル(米国まで飛ぶ、核兵器を搭載できる)を着々と開発していることを忘れてはいけない。

【今、弾道ミサイルを発射すると北朝鮮にとって不利ではないのか。北朝鮮への経済制裁や今後の交渉などで。それなのに何故実施したのか】
@ 張成沢の処刑の理由の一つには、張成沢に不満を持つ軍の意向を金正恩が受け入れたからだとも言われている。金正恩は軍の後押しが無ければ成り立たなくなっているので、軍の意向を受け入れて実施したと考えられる。
A 米韓軍事演習に対抗するために、例年にないほど、短距離ロケットや長射程多連装ロケットを多量に発射している。ノドンの発射もあわせて、軍の意向を受け入れているからだと考えられる。
B 北朝鮮は交渉について、新型の弾道ミサイルでなければ交渉への影響が少ない。あるいは、拉致問題の交渉には影響がないと判断した。日本は現在、拉致問題と大量破壊兵器の問題を結び付けないと判断しているからだ。


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