澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -26-
中国の「抗日勝利70周年」記念行事
政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 今年9月3日、「抗日勝利70周年」記念行事の一環として、映画『カイロ宣言』が公開される。ところが、その映画に毛沢東が“主演”するという。当時、毛沢東は延安で「整風運動」を行っていたはずである。
 1943年11月、ルーズベルト米大統領、チャーチル英首相、蔣介石中華民国総統の3巨頭がエジプト・カイロに集まり、戦後処理を話し合った。毛沢東は会談には出席していないので、「カイロ宣言」とは無縁だろう。ネット上では『カイロ宣言』は“歴史の改竄”ではないかと物議を醸している。
 以前から我々が指摘しているように、「抗日勝利70周年」自体が噴飯モノである。中国共産党は「抗日」とは名ばかりで、ほとんど日本軍とは戦っていない。
 最近、国民党の郝柏村・元中華民国行政院長(首相)が「(国民党が日本軍と戦った)正面戦場の役割が95%で決定的、(中国共産党が日本軍と戦った)後方戦場の役割が5%で補助的」と喝破した。それにも拘らず、北京は堂々と記念行事を行う。これも一種の“歴史の改竄”ではないだろうか。
 この「抗日勝利70周年」記念式典に、ロシアのプーチン大統領が参加する。第二次世界大戦末期、瀕死の状態だった日本は、ソ連に連合国との和平交渉を依頼していた。だが、スターリンは取り合わなかった。1945年8月8日、ソ連は「日ソ中立条約」を破棄し、翌日、満洲へ侵攻したことは、日本人として忘れがたい。
 また、韓国の朴槿恵大統領も式典に参加予定である。日中戦争当時、朝鮮半島の人々は“日本人”であり、国民党軍と戦っていた。したがって、終戦時、朝鮮人は“敗戦国民”だった。なぜ朴大統領が行事に出席するのか不思議である。かつて朝鮮半島の国家は「中国的世界秩序」の中で歴代中国王朝を宗主国と仰いでいた。やはり歴史は繰り返すのだろうか。
 一方、村山富市元首相も中国に招かれ、式典に参列するという。村山元首相は、安倍晋三政権の「安全保障関連法案」は「戦争法案」なので、絶対反対を表明している。だが、なぜか中国の軍事パレードには嬉々として参観する。いかにも面妖である。
 是非、村山元首相には、習近平国家主席に対し、東シナ海・南シナ海での中国軍による日本やASEAN諸国に対する“挑発行為”に釘を刺していただけないだろうか。また、これ以上、中国が軍事費を増大しないように要請していただきたいものである。

 話は変わるが、今年8月12日深夜に起きた天津大爆発は、そもそも事故なのか、それともテロなのか、未だ当局による正式発表はない。また、死者数、行方不明者数も、依然、謎のままである。
 あとから出て来た情報によれば、爆心近くには農民工宿舎200戸あったという。一瞬にして吹き飛んでいる。最低200人は即死したに違いない。もし、彼らに同居家族がいれば、その数は200人にとどまらないだろう。中国共産党の公表している死者数の中に、農民工は含まれていないのだろうか。仮にそうだとすれば、彼らは浮かばれない。
 一説によれば、天津大爆発は江沢民一派(「上海閥」)が起こした事件だという。北戴河会議終了後、江沢民らは天津駅を通過する習近平主席の乗った電車を爆破し、習主席を暗殺しようとした。けれども、習主席が急に日程を変えたため、暗殺計画は未遂に終わった。
 そこで、江沢民一派は暗殺計画そのものを隠蔽しようとして、天津瑞海物流公司の倉庫を爆破した。そのために無辜の民を多数殺戮している。もし、これが本当だとすれば、「事実は小説よりも奇なり」である。
 同様に、今年6月、江沢民一派は上海株式市場で大量の「空売り」を行い、市場を混乱させた疑いが持たれている。ただし、何でもかんでも江沢民一派に罪を被せようとするのはいかがなものか。

 さて、今年8月25日、ついに上海総合指数は終わり値で3000ポイントを割った。それにもかかわらず、結局、中国当局は何の手当てもしなかった。その代わり、北京は「中国版公定歩合」(預金・貸出金利)を翌26日から0.25%引き下げると発表している(貸出金利の5.00%は1990年以降の最低を更新)。昨年11月22日以来、これで5回目の金利引き下げとなる。
 世界のマーケットは中国当局の手法―株式相場・為替相場に介入―に疑念を抱いているだろう。そのため、連日、日経平均、米国のNYダウ平均は下落している。
 以上の状況下で行われる「抗日勝利70周年」記念行事とは一体、何なのか、改めて考えさせられる。ちなみに、記念行事には30ヵ国の首脳あるいは首脳級高官が参列するという。



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