米海兵隊の新戦略は中国の海洋攻勢の抑止へ

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顧問・麗澤大学特別教授 古森義久

 アメリカ軍の海兵隊の新戦略は中国の南シナ海、東シナ海での海洋攻勢の抑止に新たな重点をおき、中国軍の島々への軍事攻撃を防ぐ目的を重視することが明らかとなった。この新戦略では従来の中東などでの地上戦闘やテロ攻撃への同海兵隊の対処が減り、アジア地域の海洋戦闘能力の増強が図られるという。日本の尖閣諸島の防衛にも前向きな影響が期待できる動きだと言えよう。
 アメリカ海兵隊は今後10年ほどの長期の新戦略を作成中で、間もなく公式に発表する。その発表に先立ち、新戦略の概要が同海兵隊の総司令官デービッド・バーガー大将により明らかにされた。
 バーガー司令官は同概要をウォールストリート・ジャーナルの軍事専門のベテラン、マイケル・ゴードン記者とのインタビューで説明し、その内容は同紙3月23日付の記事で報道された。
 同報道によると、バーガー司令官はまず海兵隊の新戦略の必要性について「国防総省の相対評価局(ONA)や民間のランド研究所の予測によると、西太平洋での中国との有事では中国軍が各種のミサイル攻撃などにより米軍の防空網、空軍基地、衛星システム、司令部機能などを破壊する能力が十分にあるのに対して、米軍は抑止の能力が不十分なことが判明したために、2017年に国防長官レベルでその不備への対処に海兵隊の太平洋での戦略の再構築が必要であることが決められた」と説明した。
 その結果、アメリカ海兵隊全体の2030年までを目標とする長期の新戦略の策定が開始されたという。
 バーガー司令官が明らかにしたそのアメリカ海兵隊の新戦略の骨子は以下のとおりだとされた。
 ・海兵隊全体の規模を現在の18万9千人から17万人に減らすが、質の増強を図り、活動の主要地域もこれまでのイラクやアフガニスタンから太平洋へと比重を移す。
 
 ・戦闘能力の重点を地上戦闘から海洋の島嶼攻防戦、水陸両用作戦に移し、戦車中隊を現保有の7から0へ、橋頭堡工兵中隊を現在の3から0へ、歩兵大隊を現在の24から21へ、それぞれ減らす。
 
 ・無人機飛行中隊を現有の3から6へ、ミサイル・ロケット中隊を現有の7から21へ、それぞれ増強し、中国海軍の艦艇への攻撃能力を増す。
 
 ・特に南シナ海と東シナ海での中国軍の攻勢に備えて機動性の高い水陸海多面作戦に適した新遠征軍「島嶼連隊」を結成して、小さな諸島の防衛や攻撃を島から島へスピーディーに実行できる態勢構築を目指す。
 
 ・センサーで操作する無人の空中、水面、水中の攻撃兵器を強化して、中国海軍の艦艇の軍事進出を阻む能力を保持する。海兵隊自身が中国艦隊に対艦ミサイルを撃ち込む能力を増強する。
 
 バーガー司令官は以上のポイントを海兵隊部隊の今後10年の新戦略の重要点として具体的に強調したという。
 同司令官の発言には「南シナ海」「東シナ海」「島嶼」「島から島へ」という言葉があり、これらを繋ぎ合わせれば、当然、東シナ海での日本領土の尖閣諸島への中国側の攻勢への対応や抑止が浮かび上がる。
 つまりアメリカ海兵隊が東シナ海での中国側の狙う最大の島嶼である尖閣諸島の防衛に新たな比重をかけるという基本策がこの新戦略の中核部分とも言えるわけである。
 そしてその背後には今の米軍の軍事態勢の最大の抑止対象は中国軍の西太平洋地域での動向だという現実が明白になっているとも言えよう。
 日本にとってはトランプ政権下での米軍海兵隊のこうした動きは対中抑止と日米同盟の強化策として注視すべきであろう。