日本共産党の“珍百景”

.

政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 最近、日本共産党にこれまでにない出来事が次々と起こっている。
 1つ目が8月に行なわれた参院選を総括するための中央委員会総会での出来事だった。志位和夫委員長が行なった報告と討論のまとめの採決で全会一致にならなかったのだ。中央委員というのは、志位氏をトップとする中央委員会が候補者名簿を作成し、党大会で選ばれた人たちである。共産党員のいわば「優等生」だ。ところが一人が「保留(賛成でも反対でもない)」の態度をとったというのだ。
 共産党という政党は、党内に異論を持つ党員がいたとしても、そういう党員は代議員に選ばれず排除されていくので、最終的には全会一致になるようになっている。私自身、何十年も中央委員を務め、何十回と中央委員会総会に出席したが、全会一致以外知らない。いま中央委員は220人程いる。すべて党本部から給与が支給されている。その中央委員会総会で一人賛成しないというのは、相当、勇気がいる態度なのだ。
 その理由は明らかにされていないが、参院選の惨敗やそれを素直に認めない態度に、異論があったのかも知れない。小さな綻びが始まったのか。
 第2は、いま党内の一部から共産党の委員長を党員による投票で決めたらどうかという意見が出ている。代表的なのが私も以前党本部で机を並べていた松竹伸幸という人だ。同氏はそのブログで「共産党の党首公選を考える」というタイトルですでに11回も意見を掲載している。もっと続くようだ。自分が党首になろうというのだから、もちろんれっきとした共産党員である。彼は、一橋大学出身で志位氏とは同級生だったと思う。志位氏と喧嘩して党本部を辞め、現在は京都の出版社で編集主幹をしている。
 そもそも中央委員は党大会で選び、その中央委員会で志位氏が就いている幹部会委員長を選ぶが、松竹氏は中央委員にもなっていないのだ。それでも党首なりますと宣言しているのだ。こんなことは共産党の歴史で初めてだ。彼は、党本部や国会秘書としても長く務め、共産党のことも、党規約なども熟知した理論家だ。だから共産党も批判・妨害できないのだ。妨害すれば、返り討ちに遭うだけだからだ。この動きはまさしく珍百景だ。
 第3は、小池晃書記局長のパワハラ事件だ。来年の選挙に向けての地方議員、候補者の会議で報告を行なった小池氏が議員名を間違えたことが発端だ。それを司会をしていた田村智子政策委員長が議員の名前が間違っていると言って訂正したのだ。
 動画を見ると小池氏が田村氏の席に近づき「間違ってないよ。訂正する必要ないよ」と言ったのに対し、田村氏「あら!ごめんなさい」と言っているだけだ。小池氏が勘違いしていたのだが、パワハラでもなんでもない。現に、田村氏は「私はパワハラと思わなかった」と答えている。恐らく党員の誰かがこの場面をネット上に流し、「パワハラだ」という批判が殺到したのだろう。それに怯えた共産党がパワハラ騒ぎにしてしまったのだ。「貧すれば鈍する」の見本だ。