米国のドナルド・トランプ大統領は6月はじめにロサンゼルスでの抗議が暴動にまでエスカレートしたことに対し、州兵を投入して鎮圧にあたった。ところが地元の民主党のカリフォルニア州知事やロサンゼルス市長がその州兵動員を不当だとして抗議した。米国の大手メディアの多くも、大統領の州兵動員に反対し、全米にその反対運動が広がったように報道した。しかし最新の全米世論調査では一般有権者の57%が同大統領の州兵動員を支持しているという新たな事実が明るみに出た。現政権の政策を叩き続ける反トランプ陣営にとっては”不都合な真実”だともいえそうだ。
この世論調査結果は全米多数の世論調査機関でも近年の選挙予測などでは最も正確な動向をすくいあげてきたとされるラスムセン社によって6月中旬、公表された。ラスムセン社は長年、ギャロップ社と並んで世論調査では最大手機関とされ、両社とも大統領への一般国民の支持率を毎日、調査し、公表してきた。だがギャロップ社が2年ほど前にその毎日調査を止めたため、ラスムセン社は全米唯一の毎日調査を実施する機関となった。
同社の発表によると、6月9日から11日の間に全米合計約1,100人の有権者を対象に実施した世論調査では、トランかプ大統領のロサンゼルスへの州兵投入を支持すると答えた人が全体の57%、そのうちの41%が「強く支持する」と答えた。一方、支持しないと答えた人は40%、うち31%が「強く不支持」という回答だった。
トランプ大統領は選挙での公約通りに米国内の違法滞在外国人の本国送還を開始し、当初は本国での犯罪歴保持者や米国での犯罪容疑者を優先して、身柄を抑えてきた。ところがロサンゼルス地区ではその不法滞在者の取り閉まりにあたる移民関税執行局(ICE)に対して活動家らが暴力で抵抗し、関連する連邦政府の施設や一般商店をも破壊する行為にまで出た。トランプ大統領はこの動きを暴動だと断じて、「法と秩序の回復」を主張し、合計2,000人ほどの州兵を投入した。反トランプ陣営はこの動きを不当な弾圧だとして、米国の他の都市でも抗議活動を展開した。その結果、この種の抗議の暴力化には反対する一般国民の間でも州兵投入という措置自体への抗議が広まっているかのような構図が主要メディアなどにより描かれていた。
米国の州兵は平常状態では各州の知事の指揮下にあるが、内乱や暴動その他の有事の際は大統領がその動員を決める権限が法律で認められている。実際に1992年のロサンゼルスでの人種暴動や2001年の同時多発テロでの混乱、さらには2020年の白人警官による黒人犯罪容疑者殺害への各州での抗議の拡大などの際は大統領の命令で州兵が治安確保のために動員された。
ラスムセン社の今回の調査ではトランプ大統領の不法移民対策に対して支持を表明したのは共和党支持者では79%、民主党支持者は26%、無党派が43%という結果が出た。同様に不支持を表明したのは共和党支持者で11%、民主党支持者が60%、無党派が43%だったという。
しかし同じ調査によると、トランプ大統領のロサンゼルス地区への州兵投入に対しては共和党支持者の84%、民主党支持者の35%、無党派の54%が支持を表明した。
ロサンゼルスへの州兵投入への人種別の態度では、白人の55%、黒人の56%、ヒスパニック系の60%、アジア系などその他の少数民族系の65%が賛成を表明したという。非白人の間でも州兵投入には賛成が多いという、やや意外な結果が出たわけだ。やはり地域社会の治安の維持への願望が人種の別を越えて強いのだともいえようか。
だから、このラスムセン社の最新の全米世論調査でみる限り、「トランプ大統領の州兵投入への反対が米国全体で広まった」という主張は根拠がないことになる。