米国上院の超党派議員が日本を支持し、中国を非難した

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顧問・麗澤大学特別教授 古森義久

 中国が高市早苗首相の台湾有事に関する言明を糾弾して、日本への威迫や圧力をかけていることに対して米国連邦議会上院の共和、民主両党の有力議員の集団が12月17日、中国の言動を全面的に非難し、日本を支援する決議案を提出した。この決議案は中国側の外交官の高市首相への誹謗や戦闘機による日本の自衛隊機へのレーダー照射など一連の言動をすべて不当な対日威嚇として糾弾し、日本との同盟の絆の強化を改めて強調した。同決議案は米国が日米安保条約の規定に従い、日本の尖閣諸島の防衛に責任を持つことも明記していた。同時に決議案のタイトルのなかに「中華人民共和国による日本に対する政治的、経済的、軍事的な圧力への対応」とも記して、中国の最近の言動への激しい非難を明示していた。
 
 この決議案は日本側の一部の「米国はいまの日中対立には態度を明確にしない」という観測を否定する現実の重みをみせた。なぜならこの決議案はトランプ政権にきわめて近い共和党の有力議員らを中心に今回の日中対立に対して中国側の言動をすべて非難し、同盟国の日本への支援を無条件で明確にしたからだ。
 同決議案は上院外交委員会の東アジア小委員会のピート・リケッツ委員長(共和党)と筆頭委員のクリス・クーンズ議員(民主党)らによって「トランプ政権の日米同盟への揺るぎない支援を再確認するため」という趣旨でまず共同提案された。同時に上院外交委員会全体での有力メンバーであるビル・ハガティ議員(共和党)やジーン・シャヒーンズ議員(民主党)も共同提案者として名を連ね、文字通り上院外交委員会全体の共和、民主両党の強固な日本支持、中国糾弾の意思表明となった。この決議案はまず上院外交委員会に提出されて審議され、近日中に上院全体で採択される見通しとされる。
 同決議案は高市首相が日本の国会で11月7日に「中国が台湾への武力行使に出れば、日本側の国家存立危機に該当する」と述べたことはそれまでの日本政府の政策の枠内であり、何の問題もないという基本の認識を明確にした上で、その高市発言に対する中国側の威迫や誹謗などを具体的に列挙して、いずれも不当だと断じていた。
  同決議案は全体として中国の言動について以下の具体的事例を挙げて、個別に不当だとか違法だと断じ、抗議するという意思を明示していた。
 ▽中国の大阪総領事の高市首相の首を斬るという不当な発言
 ▽アジア太平洋経済協力会議(APEC)での高市首相の台湾代表との会談への中国の抗議
 ▽中国政府の中国国内での日本側文化人による活動の禁止
 ▽中国政府の中国国民の日本訪問の制限
 ▽中国海警の艦艇による日本の施政権下にある尖閣諸島近海への侵入
 ▽中国政府による高市首相非難の文書の国連への送付
 ▽中国軍戦闘機による沖縄周辺での日本の自衛隊機へのレーダー照射
 ▽中国軍の爆撃機2機と戦闘機4機によるロシア軍機と合同での沖縄と宮古島の海峡上空飛行
 ▽中国による台湾の行政府顧問となった元自衛隊の岩崎茂氏への制裁
 以上のように中国政府の日本に対する最近の言動をすべて「不当な脅しや圧力」と断じている点が顕著だった。
 
 その上で同決議案は米国議会上院全体として以下の決意を表明していた。
 ▽中国政府が米国の防衛面での同盟国である日本に対して経済、軍事、外交面での強制や侵攻を
  実施することを非難する
 ▽日本政府が、中国が地域的な安定を乱し、台湾海峡の現状を一方的な軍事力や強制力で変えよう
  とする動きに反対することを賞讃する
 ▽日本が米国の主要同盟国として自由で開かれたインド太平洋の維持のために平和と安定に寄与
  していることを認識する
 ▽日本政府がアジア全域での抑止の強化のために自国の防衛支出を増加していることを歓迎する
 ▽日本政府が中国側からの一方的かつに継続的な挑発にもかかわらず、中国との関係の緊迫を抑制
  しようとしている努力を賞讃する
 ▽米国が日米安保条約第5条の日米共同防衛への揺るぎない誓約を保ち、特にその誓約が尖閣諸島
  の防衛にも適用されることを再確認する
 ▽日本政府と日本国民が中国政府からの嫌がらせと緊迫の悪化の試みに対抗することに同調し、
  味方として立つ
 
 上院の決議案は米国議会の総意として日本への支持、中国への非難をここまで明白に表明したのだった。こうした米国立法府での超党派の強い日本支持表明からは「米国は日中対立では日本を支持しない」というような日本側の一部での推測の根拠はどうしても出てこないと言えよう。