米国も中国の日本の古屋議員制裁に反対

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顧問・麗澤大学特別教授 古森義久

 中国政府が自民党の古屋圭司衆議院議員に「入国禁止」の措置をとったことに対して米国の大手紙が真正面から反対する趣旨の社説を掲げた。同社説はトランプ大統領が中国訪問の際にはあえて日本に立ち寄り、日中の衝突では日本側を全面的に支援する姿勢を明示すべきだとも主張した。 
 米国側では中国政府から入国禁止を宣言された連邦議会の議員や中国研究専門家もすでに多数おり、この種の中国の措置には一貫して反対している。しかも日本とは異なり、中国側で国内の人権弾圧などに関与した共産党政権幹部には米国への入国禁止という厳しい措置をとっている。
 
 米国でも最大部数を誇る大手紙ウォールストリート・ジャーナルは4月1日付の社説で「中国が日本を懲罰し続ける」と題して、中国政府の今回の自民党の古屋圭司議員への措置に対する反対を述べた。同紙は米国の主要新聞の中でも、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストのように民主党リベラル支持ではなく、どちらかと言えば保守志向だが、トランプ政権への批判も時には鋭く展開する。いわば中立に近いこのウォールストリート・ジャーナルが日中対立で日本支持の立場を明示したことは米国世論の反映としても注視に値する。
 同社説はまず古屋圭司議員を日本の政界でも重要な役割を果たし、いまの高市早苗首相にとっても有力な側近だと位置付けた上で、中国政府が台湾訪問から帰ったばかりの古屋氏を中国への入国禁止とした制裁は高市政権に対する威圧的な措置の1つだと特徴付けていた。その上で同社説は以下の骨子を述べていた。
 
▼この措置は昨年秋に高市首相が台湾有事への日本の安全保障の意味を述べたことを気に入らないとする中国政府の反発の一部で、高市政権の台湾問題への政策を変えさせようという意図の押しつけの一貫である。
 
▼中国政府は最初は高市首相への威嚇的な悪口雑言を浴びせたが、同首相が動じないとみると、今度は中国人観光客の日本訪問への圧力、さらにはレアアースなどの戦略物資の日本への輸出の規制などを実行した。
 
▼古屋議員への制裁はその対日攻撃の新たな局面を示すとも言え、今回は日本の自衛隊員の在日中国大使館への侵入と合わせて、「日本の軍国主義復活」とも非難しているが、自衛隊員の行動はまったく単独とみられている。
 
▼中国のこうした行動に対して高市首相は毅然とした態度をとっている。また古屋議員も「私は中国を訪問する予定はないから、入国禁止も気にはならない」と述べている。しかし中国のこうした言動は日本だけでなく地域全体への主要な脅威になりつつある。
 
 以上のように状況を説明した同社説は「それでもなお現状の日本にとっては同盟国や友好国からの支援が有益となろう」と述べて、以下のような提案を示していた。
 
▼日本の経済はなお弱体な部分も多く、今回の米国のイラン攻撃で石油の高騰もあり、米国はトランプ関税の一部を緩和して、日本の対米輸出を振興する措置を検討すべきだ。
 
▼トランプ大統領は予定された中国訪問の際にはまず日本に立ち寄り、米国が支援するのはあくまで同盟国の日本だという基本姿勢を明示すべきだ。
 
 ウォールストリート・ジャーナルの社説は以上の趣旨を述べ、中国と日本との対立では無条件に日本を支持すべきだとする基本姿勢を見せていた。
 しかしその背後には米国側ではすでに中国政府から個別に入国禁止を宣言された政治家や専門家が多数、存在するという実態がある。だから今回の日本の古屋議員に対する中国側の制裁措置に対しても、ごく自然に中国側の威迫を非難するという反応が生まれるのだとも言える。
 米国議会では2023年9月の段階で下院外交委員長のマイク・マコール議員や人権委員会のクリス・スミス議員が中国への入国禁止という措置を受けていた。マコール議員は台湾との絆が強すぎるという理由、スミス議員は中国政府の自国内での人権弾圧を追及したという理由が示唆されていた。
 民間でもワシントンの主要研究機関のハドソン研究所も2023年頃には、そのすべての研究員が中国への入国禁止という措置を受けた。この時はハドソン研究所の代表として元下院議長のニュート・ギングリッチ氏が台湾を訪問し、中国政府が主張する「一つの中国」の原則を批判したという理由だった。だから米国では官民を通じて、中国からの入国禁止という措置は珍しくないわけだ。
 一方、米国側も議会の提唱で米政府が中国側の特定人物を米国への入国禁止にするという措置をとってきた。代表的なのは中国共産党新疆ウイグル自治区委員会書記を務めた陳全国氏で、ウイグル人の組織的な弾圧の責任者として米国への入国禁止と米国内の所有資産の凍結という措置を受けた。ただし陳氏は中国共産党内部ではその後も昇進し、現在は党中央政治局員という地位にある。