3ヵ月後に迫った米国の中間選挙については日本の主要メディアはもっぱらトランプ大統領を支える与党の共和党側の不利を伝えてきたが、現地の米国では民主党側への逆風も顕著となってきた。一連の予備選で民主党側では社会主義を唱える極左候補たちが中道派候補を破る事例が相次ぎ、民主党全体の分裂が表面に出てきたためだ。この結果、11月の選挙では共和党が支持を増し、上下両院での多数を守る見通しも世論調査の専門家の間でも語られるようになった。米国政治の正確な読み方という点で日本側でも改めて注視すべき変化だと言えよう。要するに簡単な予断は危険だということである。
米国の連邦議会ではいま上院が共和党51議席、民主党が49議席、下院では共和党222議席、民主党213議席という僅差にある。だがトランプ大統領の率いる共和党が議会両院の多数を制するという基本構図は揺るぎない。この現状に対して11月はじめに実施される中間選挙では下院全体の435議席と上院の3分の1の37議席が改選される。
この中間選挙は大統領の地位を左右するわけではないが、トランプ大統領にとっては議会両院が自分を支持する共和党だという現状が変われば、残りの2年の年期の執政が議会の協力を得にくくなって、厳しくなる。しかも過去の長い実例では選出されたばかりの大統領の政党はこの中間選挙で議席を失うことが多かった。その上にいまのトランプ大統領は各種世論調査で支持率を低くしている。そんな状況から米国では民主党系のメディアや政治評論家はトランプ支持の共和党が中間選挙では上下両院ともに議席を減らすだろう、という予測を述べていた。日本側ではさらに強く、「民主党勝利」の見通しを述べる向きが多くなっていた。
ところが7月後半から8月にかけての上下両院選挙のための一連の予備選で民主党内でも過激な左派とされる候補が次々と勝利をおさめた。ニュージャージー州などの東北部やミシガン州のような中西部での下院選の民主党側の予備選では極左とされる候補者たちが中道派とされる対抗馬を破って、11月の本選での候補に選ばれたのだ。
代表的なのは8月11日に実施されたミネソタ州の民主党側の上院予備選挙だった。急進左派とされるペギー・フラナガン候補が主流派の候補を破ったのだ。フラナガン氏も、さらに極左とされる他の候補たちも民主党内の過激派集団「米国民主社会主義者たち」(DSA)のメンバーだった。
民主党上院の現職議員バーニー・サンダース氏らを中心に結成されたDSAは社会主義を公然と唱えている点で米国の国政では極めて異端の存在である。社会主義的な政策としてはまず大統領選挙の廃止や上院の廃止、そして大統領は国民の直接投票ではなく、議会下院の推薦によるとする。経済面でも自由な私有経済、資本主義への国家の規制を主唱して、富の再配分を重視する。不法入国者への取り締まりに反対し、警察への資金の大幅減額を求める。
こうした主張に同調してすでに公職に就いたのはサンダース上院議員に限らず、ニューヨーク市長のゾーラン・マムダニ氏やニューヨーク州選出のアレクサンドラ・オカシオコルテス下院議員である。いずれも民主党内でも年来の多数派の中道派に背を向けての社会主義に近い超リベラルの政策を主唱してきた。
しかしDSA支持の社会主義的な政策への信奉者は民主党内でも、さらに全米水準でも少数派だとされる。だから民主党内部の分裂や過激傾向は結果として共和党側を利するとされるわけだ。実際にこの1週間ほど、それまで中間選挙での民主党優位を予測してきた世論調査、政治動向調査の機関の「クック政治報告」や「インサイド・ポリティックス」が修正を発表するようになった。それらの予測では民主、共和両党への一般有権者の支持率は民主党が数ポイントの優位だとしていたが、現在では逆に共和党が数ポイントで優勢に立ったのだという。
もちろん選挙は水もの、いざ実施してみないとわからない。だからこそ日本側での「トランプ不人気、民主党勝利」というあまりに先を急ぐ宣託は危険だということだろう。