高市早苗内閣が誕生してから間もなく1年を迎える。政権発足当初、高市首相に寄せられた国民の期待は決して小さいものではなかった。実際、内閣発足直後の世論調査では、支持率が70%台に達し、高い期待の中でのスタートとなった。
今年2月の衆院選では、自民党が衆議院の総定数の3分の2に当たる310議席を上回る316議席、新たに連立政権を組んだ日本維新の会が36議席を獲得、政権基盤は盤石になった。しかし、政治において最も難しいのは、期待を集めることではなく、その期待を具体的な成果として実現することである。その意味で、この1年は「期待される政権」から「結果を出す政権」へと歩みを重ねる1年であったと言える。
高市内閣が一貫して掲げてきたのは、「日本列島を、強く豊かに。」というスローガンであった。その根底には、外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力、人材力という総合的な国力を強化し、日本の将来に対する責任を果たそうとする使命がある。2026年2月の施政方針演説では、その実現に向けた経済政策の本丸として「責任ある積極財政」を打ち出した。ここで重要なのは、「積極財政」という言葉だけを見るのではなく、それを何のために実行するかということである。高市首相はAI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティー、防衛産業、航空・宇宙、合成生物学・バイオ、資源・エネルギー安全保障・GX、防災・国土強靭化といった17の戦略分野を挙げ、研究開発から社会実装までを総合的に進めようとしている。
同時に、この1年は「守り」の重要性が改めて認識された。サプライチェーンの強靱化、経済安全保障の推進、情報機能の強化と、国民の生命と財産、暮らし、そして国家基盤を守るための施策が積み重ねられてきた。外交では首相就任以来、延べ12ヵ国を訪問し、首脳外交を積極的に展開、アメリカや韓国、ASEAN、G7との関係強化を図ってきた。
勿論、1年間で全てのテーマに答えが出るわけではない。物価高や少子高齢化と、日本が抱える課題は多い。だからこそ、これから問われるのは、掲げたスローガンをどこまで継続的に、そして着実に実行し、国民が実感できる成果へと結実させられるか。その過程を丁寧に説明し、国民の理解と支持を得ていくことも必要である。
先般の内閣改造では、留任に加えて、再入閣も目立った。目新しさを打ち出すよりも、実務能力・経験重視の人事であることが分かる。政権発足後の課題に迅速に対応し、具体的な成果を積み上げることを優先した布陣と考えられる。言わば「見せる人事」よりも「働かせる人事」である。
高市内閣にとって本当の試練は、これからである。問われるのは、この布陣によって日本の国力をどう立て直すことができるか。次代を担う若い人々が、日本の将来に希望と自信を持てる社会をどのように構築していくのか。この2つの課題に明確な答えを出すことができれば、「日本列島を、強く豊かに。」というスローガンも、単なる政治的なキャッチフレーズではなく、高市内閣の取り組みを象徴する言葉となろう。