朝鮮半島との関係は 日本外交にとって最大の試練
―核・ミサイルを放棄しない北朝鮮とどう向き合うのか?文在寅政権下の日韓関係は今後一層難しくなる―

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顧問・元大韓民国駐箚特命全権大使 武藤正敏

1.地政学を理解しない文在寅政権は、北朝鮮情勢に対処できるのか
 (1)文在寅政権は、就任後130日を超え(9月15日現在)、未だに70% ほどの支持率を誇っているが、それは決して政権の政治・経済・外交が成果を上げているわけではない。文政権のこれまでの政策は、必ずしも情勢を的確に分析し、熟慮して打ち出されたものではなく、随所に世論迎合的、思い付きによる政策が見られる。韓国の人々の思考方式は頭で考えるよりも、ハートで感じる傾向があり、それが政策立案過程にも、世論の受け止め方にも表れている。合理的に考えれば、決して良い結果が生まれるとは思われないことも政策として取り上げられている。
 (2)もともと韓国外交は、北朝鮮との関係に執着する一方、韓国の置かれた地政学的状況を冷静に分析する習慣がない。例えば、韓国と日中の関係。中国のような国際社会での協力よりも、国益を優先する国との関係では、日韓が固く協力することで、中国も日韓と協力することに利益を感じるようになるものである。
 北朝鮮との関係でも、韓国に協力してきた国は中国ではなく日本や米国であった。しかし、韓国は中国に寄り添い、時として日米とは距離を置く姿勢を見せる。歴史問題で中国と手を組み、日本を攻撃する。このようなことをすることにより、日本人の嫌韓感情を助長し、中国には甘く見られるのである。
 (3)文在寅政権の外交の基本路線は、北朝鮮問題で韓国が主導権を握ることである。G20首脳会議のため訪問したベルリンで行った演説では、北朝鮮核問題解決の道筋として、18年中の南北首脳会談、これを踏まえた米韓首脳会談、米朝首脳会談、そして締め括りは南北プラス米中、または米中日露の首脳会談を提案している。韓国は、主導権を握ってこれを進めるため、主要関係国と良好な関係を構築することに努めている。THAAD問題では曖昧さを保ちながら、米中間で綱渡りをしてきたが、日本とは経済・安保と歴史問題を切り離して対立を避けようとしている。しかし、文大統領はG20からの帰国後、閣議において朝鮮半島の問題を解決する力は韓国にはないと述べている。各国とも自国の国益に従って行動しており、韓国はこれをコントロールできないということであろう。
 (4)それでも各国首脳との会談で対話の重要性を力説した。文氏にとって、経済制裁は、あくまでも北朝鮮を対話に引き出すためであり、基本は対話である。