米朝首脳会談と東アジアの現状変更

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統一日報主幹 洪 熒

韓半島に建国された2つの国家
 今年は、韓半島の南と北に異なる体制の国家が樹立されてから70年になる年だ。この南・北の「建国」70年を迎え、韓半島を中心とした東アジアの情勢が揺れ動いている。1 年前には想像もできなかったことが起きている。韓半島の現状変更が始まったのは明白だ。この現象変更の指向点を予測するのに役立つ視点を提供するのがこの論文の目的だ。
 第二次世界大戦後、米ソの分割占領によって分断され、1950年に金日成とスターリンと毛沢東の共謀によって起きた南侵戦争(韓国戦争) と休戦で固着された韓半島の「1953年体制」が65年ぶりに根本的に変わりつつあるのだ。事実、この65年間の対決、対峙状況は歴史的に見てもあまりにも長すぎた冷戦だ。南北の異なる体制は、もはや共存が不可能な状況に達した。この状況がついに終止符を打とうとしているのだ。
 勿論、物理的に韓半島の現状変更を試みたのは、核武装をすることで韓米同盟に挑戦した北韓だ。そして、北韓を自国の覇権戦略に利用してきた中国共産党政権だ。北韓の核問題が表面化したのは1990年だ。この28年間、北の核問題解決のために様々な努力があったが、国際社会は北韓の核武装阻止に失敗した。

米朝首脳会談に成果はあったか
 北韓の核武装の目的は、彼らの体制の存続を越え最終的に核を持つ北韓が韓国を統一するためだ。この現状変更を加速させたのが、シンガポールで開催された米朝首脳会談(6月12日)だ。勿論、金正恩がシンガポールにまで行ったのは、トランプ大統領が軍事・外交的に金正恩を圧迫した結果だ。
 ところが、世界の耳目を集めたシンガポールでの米朝首脳会談は奇妙な形で終わった。米国を脅かす北韓(金正恩)の核ミサイルの除去を目的として始まった米朝首脳は、「北韓の非核化」という目標達成のためには成功していないように見える。
 世界は、北韓の核を除去するため軍事力の使用まで準備してきたトランプ大統領によって、北核の完璧な廃棄、つまりCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を期待したが、会談後に発表された合意文書は予想を外れた。「非核化問題」に焦点を合わせて合意文を読むと、金正恩は「非核化」を約束はしたが、トランプ氏は金正恩が望む「段階的実行」を許したことになる。つまり、金正恩の主張が貫徹されたかのように見られる。更に、トランプ氏は金正恩に優しく接した。米・朝の間で裏の合意が存在することを推測できる。