中国主導の「一帯一路」が アジア太平洋地域にもたらした 衝撃についての分析

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国立高雄大学政治法律学系教授 楊 鈞池

1、緒言 
 中国の習近平国家主席が2013年、カザフスタンを訪問した際に発言した「一帯一路」とは、「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海洋シルクロード」の略称である。この「一帯一路」政策の提唱に対し、世界各国の反応はこれを支持するにせよ、しないにせよ、研究しない国はない。そもそも中国は何故この一帯一路を提唱するに至ったのか? 戦略的な目標は何なのか? 国際的秩序、とりわけ、東アジア地域に将来どのような衝撃、或いは影響を及ぼすのか? 
 これは陸のシルクロードに沿って、中国がその沿道上の諸国家との間で経済的パートナーシップを打ち立て、インフラ建設を推進し、現在の過剰な生産能力と労働力の受け入れ先を求めることによって、中国のエネルギー資源と食糧供給を確保するために、中国西部地域における開発を推進しようとするものである。
 具体的には、新疆、青海、甘肅、陝西、寧夏や、西南地域の重慶、四川、広西、雲南、及び内モンゴルといった諸地域の開発を促し、ひいてはアジア太平洋地域やヨーロッパ、その中間に位置する中央アジア地域の開発を目指している。更に、中国から中央アジア、北アジア、西アジア、インド洋沿岸の国家及び地域を経て、ユーラシア大陸を貫いて東はアジア太平洋経済圏に接し、西はヨーロッパ経済圏まで対象としている。中国政府は、この政策により「共商、共建、共享」の原則を堅持しつつ、一帯一路に面したエリアのインフラを完備し、より高水準な陸海空の交流ネットワークの構築、同時に、投資や貿易における利便性を高め、高品質で高水準の自由貿易エリア網を構築するとしている。
 例えば「上海協力機構」を構成する中国、ロシア、中央アジアの国々は全てシルクロード沿道に位置している。この「一帯」には主として2つのベクトルが設けられ、いずれも中国から出発しヨーロッパを終点としている。
 「一路」とは、「海のシルクロード」に沿って中国、東南アジア、南アジア、中東、北アフリカ、ヨーロッパ各国と経済的な協力を推し進めつつ、中国の沿岸地域である江蘇、浙江、福建、広東、海南、及び山東の6省を網羅するものである。この「一路」にも「一帯」と同様2つのベクトルが設けられている。一帯一路に沿って26の国家があり、44億の人口が擁せられ、経済的な規模は21億ドルに達している。 
 この政策を支援すべく、中国政府は400億ドルを出資し、2014年には「シルクロード基金」を設立し、アジア地域の経済的な発展を推進した。