米中対決を「新冷戦」と呼ぶのは正しくない

.

政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

長期化は避けがたい米中対決
 昨年12月に行われたブエノスアイレスでの主要20ヵ国・地域首脳会議に出席したトランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談によって、米側が対中制裁関税の10% から25% への引き上げを当面見送ること、知的財産権侵害を巡る争いは90日の期限で交渉することとなった。90日以内に解決しなければ、米国は関税を引き上げるということでもある。
 一時的な「休戦」ということではあるが、米中対立の基本構造が変った訳ではない。この対立が長期化することは間違いなさそうである。一昨年(2017年)12月、米トランプ政権は「国家安全保障戦略」をまとめた。ここでは、中国やロシアを名指しして、「技術、宣伝および強制力を用い、米国の国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力」と批判し、「我々は、米国の知的財産を盗用し自由な社会の技術を不当に利用する者から、自国の安全保障の基盤技術を守る」と宣言していた。トランプ政権が中国に仕掛けている強硬姿勢は、この新たな国家戦略に基づいている。
 さらに強烈だった副大統領の対中批判この戦略を詳細に語ったのが、昨年(2018年)10月4日、ペンス米副大統領がハドソン研究所で行なった講演である。ペンス氏は、「ソ連の崩壊後、我々は中国の自由化が避けられないものと想定した。21世紀に入り、楽観主義によって中国に米国経済への自由なアクセスを与えることに合意し、世界貿易機関に加盟させた」「これまでの政権は、中国での自由が経済的だけでなく政治的にも、自由主義の原則、私有財産、個人の自由、宗教の自由、全家族に関する人権を新たに尊重する形が拡大することを期待してこの選択を行ってきた。だがその希望は達成されなかった」と述べ、殆ど全分野に亘って中国を厳しく批判したのだ。
 そもそも中国の経済的成功の大部分は、アメリカの中国への投資によってもたらされた。過去25年間に亘って「我々は中国を再建した」。
 ・ 中国の安全保障機関が、最先端の軍事計画を含む米国の技術の大規模な窃盗の黒幕である。中国共産党は盗んだ技術を使って大規模に民間技術を軍事技術に転用している。
 ・ 中国は、米国を西太平洋から追い出し、米国が同盟国の援助を受けることを阻止しようとしている。だが彼らは失敗する。
 ・ 中国のキリスト教徒、仏教徒、イスラム教徒に対する新たな迫害の波が押し寄せている。
 ・ 中国は「一帯一路」構想のもとで「借金漬け外交」を行い、影響力の拡大を図っている。