中国による対アフリカ援助のリアリティ
―「一帯一路」の終着地でおきていること―

.

研究員 佐藤裕視

中国の対外援助におけるアフリカの位置づけ
 中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の重要地域として位置づけられたアフリカは、資源と成長著しい市場規模、そして伝統的な協力関係が相俟って、今や中国にはなくてはならない成長の原動力だ。しかし近年、世界中から批判の声が上がっている。本稿はそんな中国の対アフリカ援助の実態を整理し、今後の展望と日本のとるべき方向性について考察したい。
 21世紀に入ると中国による対外援助は爆発的に増加した。米ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院の研究グループによると、中国の対外援助額は2003年に総額で約6.31億米ドルであったのが、2018年には33億米ドルへと爆発的に増加した(表1)。例外的に2016年と2017年に減少を見せたが、これは15年間で約5.23倍(年平均約1億7,793万米ドル)ものペースで増加したことになる。
 ただこの中国による対外援助は、日本や欧米主要援助供与国(西側ドナー)とは異なったやり方で行われていることに留意が必要だ。中国対外援助研究を分析した北野の定義を参考に、その実態を把握してみたい。北野によると、中国の対外援助は7つに分類することができ、これら全てを合算することで中国による対外援助のおおよその総量を算出することができる。
 その7つとは、(1)中国通商部(MOFCOM)による無償援助及び無利子有借款(元建て、金利0%、貸付実行期間5年、据置期間5年、返済期間10年)(2)対外援助を管轄する他省庁による無償援助(3)発展途上国からの留学生に対して給付される中国教育部(MOE)による奨学金(4)無償融資に基づく利子補給(5)二国間援助としての中国輸出入銀行(中国进出口银行)による優遇借款(元建て、金利2~3%、返済期間15~20年[据置期間5~7年])中(6)多国間援助として国際機関に対する出資金及び拠出金(AIIBに対する払込資本を含む)(7)中国国際開発銀行(CIDCA)による管理手数料。以上に加えて、中国輸出入銀行が提供する「優遇バイヤーズクレジット」(米ドル建て)も輸出信用でありながら優遇借款と同条件であることから、対外援助に換算できる。
 こうした中国による対外援助の爆発的増加は、特に中国が自国の経済成長の糧となる資源と市場を求めてきたアフリカ大陸で顕著だ。例えば、アフリカ南西部に位置するアンゴラでは、豊富な石油産出量を背景に、中国とのインフラ建設のための借款契約を締結し、その支払いを長期石油輸出で代替している。