米中関係の真ん中にいる日本の果たすべき役割

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国家基本問題研究所理事長 櫻井よしこ

 皆様こんにちは。櫻井よしこです。いつも長野さんご夫妻には本当に親しくさせていただいて嬉しく思っております。
 本日は日本戦略研究フォーラムで「日本が直面する中国リスクの現状と打開策―国防・政治・外交・経済・学術―」というテーマでシンポジウムが開かれます。おめでとうございます。このようなシンポジウムの冒頭でお話をさせていただくことを、とても光栄に思います。
 日米関係、日中関係、そして米中関係は、非常に速くダイナミックに変わっています。4月16日、菅総理がワシントンD.C.で対面での首脳会談に臨まれました。これは、米国大統領が世界の指導者の中で一番先に日本の菅総理をお招きした、非常に重要な会談です。歴史的にもこの首脳会談は、大きな意味があるものと考えます。
 何故、米国が日本を首脳会談の第1番目に招いたのか。それは菅総理であるからではなく、日本であるからです。中国とのせめぎ合いの中で拠点となるのが日本であり、米国においても日本との協調なしには、中国に対する抑止を十分に効かせることができないという見方が広がっています。それだけに日本の役割が非常に重要となります。
 実は私は菅総理がどのような発言をするのか、少し心配して見ておりました。首脳会談の前に発表された4月14日の『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の記事があったからです。これは菅総理のお名前で書かれた記事です。その中でテーマとして取り上げられていたのが、気候変動やグリーン革命などで日本は経済力を回復し、経済成長を担保し、それらをもって国際社会の経済に貢献するという内容でした。
 しかし今回の日米首脳会談の一番重要なテーマは、まさに中国です。記事の中では中国についても、中国による人権弾圧などについても触れていませんでしたので、私は心配したのです。けれども終わってみれば、菅総理は非常によく、色んなことに目配りしながら、踏み込んでお話されたと思います。
 まず3月の日米外務・防衛大臣による「2+2」では、日米双方ともに非常に深く踏み込みました。中国を名指しで批判し、中国の脅威に対して日米が力を合わせて抑止を効かせると言った訳です。その中で、台湾の平和と安全について、強い関心を持つということも言明されました。これは大変な重い意味を持つことだと思います。日米首脳会談の共同声明には「台湾海峡の平和と安定」ということがしっかりと書き込まれていました。その先に菅総理は、日本は国防力をこれから強化していくと言明もしています。