第1回政策シミュレーション
「徹底検証:台湾海峡危機 日本はいかに抑止し対処すべきか」
開催目的と概要説明

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顧問・元陸上幕僚長(元陸将) 岩田清文

 皆さん、こんにちは。昨年8月に開催した第1回シミュレーションの目的と概要についてご説明致します。この写真は、首相官邸の小会議室をイメージしたものです。
 何故シミュレーションを企画したかと言いますと、次のような問題意識がありました。日台関係は、1972年の日中国交正常化以降50年間に亘り、安全保障問題の空白状態が続いて来ました。その結果、各公的機関の担当者は、台湾に関する知識・理解が不足し、有事における日本政府と台湾総統府との関係構築、或いは自衛隊と台湾軍との連絡調整機能の確立なども全く欠落していたというのが実態です。何とかこの状況を改善して、政・官・民が共通の認識の下、危機感をもって対中政策、対台湾政策の見直しに繋げていくことを目的とし企画・実施した次第です。
 ちょうど我々がシミュレーションの企画をしていた昨年3月、米国のインド太平洋軍司令官のデービッドソン大将が米国議会に於いて、中国の台湾に対する脅威はここ10年、実際には6年以内に明らかになると警鐘を鳴らしました。また同じ頃、日米2+2の安全保障協議委員会の場において、防衛大臣、外務大臣により、台湾海峡で不測の事態が起きかねないという、まさに危機意識に対する認識の共有が行われました。そして4月16日、訪米した菅義偉首相(当時)とバイデン大統領の間で日米首脳共同声明が発出され、台湾海峡の平和と安定の重要性が明記されました。日米の共同声明における「台湾海峡」という文言は52年ぶりであります。これは中国による台湾侵攻の危機が現実的であるとの認識と同時に、台湾有事に対する国民の関心の高まりがあったということです。
 こういった状況の中、昨年のシミュレーションでは、台湾海峡問題を「見える化」し、安全保障問題・防衛問題の分かり難い部分を一般の方々にも分り易く、何が問題なのかを浮かび上がらせ、その結果として、台湾有事は日本有事になるということをご理解いただければ有難いと考えた次第です。
 具体的には、4つのシナリオに基づく政策シミュレーションを実施して我が国の安全保障問題を抽出する。そして抽出された問題点を世に公表して啓蒙することを目的として実施しました。
 シミュレーション実施の全体像ですが、プレイヤー(日本セル)としては、総理役を始め日本政府として意思決定していただく方々にお集まりいただきました。