ポスト安倍時代
台日関係はどう進むか

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上席研究員・新台湾国策知庫諮詢委員 廖雨詩

安倍氏の日本、アジア、世界への貢献
 7月8日、安倍晋三元総理が凶弾に斃れたことは誠に不幸なことであった。生前の功績を考えれば、安倍氏が「戦後最も重要な日本の指導者であり、世界的な指導者でもある」と、国内外で認識されているのは当然である。
 岸田首相は、9月27日に執り行われた安倍氏の国葬儀の理由として、憲政史上最長の在任期間(3,188日)だけでなく、内政と外交において多大な功績を残したことを挙げた。より正確に言えば、日本が西側の民主主義諸国で中心的な地位を確立し、インド太平洋の民主主義と平和を守る頼みの綱となったのは、安倍氏の外交成果である。
 現在日本、米国、インド、豪州で形成する4ヵ国戦略対話(クアッド)は安倍氏が提唱した「自由と繁栄の弧」「アジアの民主主義的安全保障ダイヤモンド」から発展したものだ。この戦略概念の刺激により米国はインド太平洋戦略を策定し、これによりインド太平洋の同盟国が結束し、中国の覇権主義的膨張に共同して対処することになった。
 さらに、安倍氏は台湾への軍事侵攻を否定しない中国に対し、日米同盟を活用することを決意した。台湾海峡は東シナ海と南シナ海をつなげ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に欠かせない。安倍氏の地域の平和を守る熱意と功績により、インド太平洋と台湾海峡は長い間平和と安定を保っている。
 
安倍政権の重要性
 「戦後レジームからの脱却」が安倍政権にとって最大のテーマであった。また、日本経済を立て直すために「アベノミクス3本の矢」と「観光立国」を打ち出した。安倍氏が台湾でよく知られているのは、台湾支持を明確にする政治家としての姿勢であった。しかも、安倍氏は米国の対台湾曖昧政策を正し、台湾防衛を明らかにするよう呼びかけた。安倍政権時代に打ち出された重要政策――①アベノミクス ②民主主義を基軸とした外交関係構築 ③「自由で開かれたインド太平洋」構想と「クアッド」等の安全保障政策――が台日の強固な関係へと発展してきた。
 
安倍政権を継承する岸田政権
 安倍氏の死によって岸田政権が政策を大きく変えることはないだろう。7月10日の参議院選挙の勝利により、自民党の権力基盤はより強固になり、岸田政権は安定の「黄金の3年間」を手に入れた。岸田首相は安倍氏のいない日本を背負うことになった。