日本の進路について決断する時

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政策提言委員・龍谷大学教授 李 相哲

 ご紹介に与りました龍谷大学の李相哲と申します。
 35年前、1987年9月21日、私は留学のために日本にやって来ました。翌22日の12時からホテルグランドヒル市ヶ谷1階のレストラン街で皿洗いを始めて、日本の生活が始まりました。その後この近くにある業界紙を発行している会社でアルバイトをしながら、上智大学に通いました。私にとってはこの市ヶ谷周辺が「第二の故郷」です。まさにこの市ヶ谷で「日本の進路」を語ることになろうとは、夢にも思っていませんでした。
 本日は主に、北朝鮮とどう向き合うか、韓国をどう理解するか、この2点についてお話したいと思います。
 
日本の立ち位置は今のままで良いのか
 先ほど私自身のことについて少しお話しましたが、私が日本にやって来た1987年の日本は、まさに世界最高でした。物価も高かったですが、給料も世界一でした。様々な家電製品など全てが世界の最高を走っていました。私も日本に憧れて来ましたが、あれから35年。この間、日本はどんどんその力を失ってきているように思います。
 今、専門家の中では、日本はやがてインドネシアやマレーシアのような国になるのではないかと言われています。個人的な実感で言えば、日本は住み心地がとても良いです。私は毎年世界を旅していますが、日本が一番いい国だと思っています。特に中国・韓国と比べても、日本では普通のサラリーマンがちょっと頑張ればマイホームを手に入れることが出来る。これは中国や韓国では到底考えられないことです。しかし、日本を取り巻く環境が年々厳しくなっている中で、このままでいいのかという心配もあります。
 今年の国連総会のテーマは、「分水嶺の瞬間」でした。世界も今、分水嶺に立っていることだということでしょう。例えば、気候変動や人道的問題などがありますが、他の分野でも世界は分水嶺に立っています。例えば北朝鮮のような国が核を保有した場合、それを許していいのか、黙認していいのか。ロシアがもし核を使用した場合、我々はどう対応するのか。そのような問題に関して国連は何も出来ないと私は思っています。各国は自分で自分の生きるべき道、この国際社会でどう振舞うかを考えるべきだと思います。特に今の日本の場合は、現実問題として北朝鮮がミサイルを撃って、万が一日本の領土に落下した時、どう対処するのか、その政策を考えているのか、私には分かりません。
 先ほど坂場先生が台湾問題に触れましたが、台湾を取るために中国は尖閣を先に取ります。