台湾から見た世界初の日米台
―「台湾有事は日本有事」シミュレーションの感想―

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台湾日本研究院事務局長 林 彦宏

1.前言
 2023年7月15・16日、日本戦略研究フォーラム(JFSS)は、東京にて「徹底検証:新戦略3文書と台湾海峡危機―2027年に向けた課題」をテーマに政策シミュレーションを行った。今年は3回目で、過去2回は日米だけで行ったが、今回は台湾の有識者3名が初めて招待され、世界初の日米台3ヵ国によるシミュレーションとなった。
 シミュレーションに参加した台湾側のメンバーは、遠景基金会執行長・賴怡忠博士、国防安全研究院(INDSR)・林彦宏博士及び楊長蓉博士である。また、台湾からINDSRの霍守業理事長(現役陸軍1級4星上将)、李廷盛副執行長(退役空軍中将)、蘇紫雲所長、及び台北駐日経済文化代表處・蔡明耀公使ら10名がオブザーバーとして参加した。
 オブザーバー参加としては日本の他、台湾は2番目に多い参加であった。それ以外には、駐日米国大使館、駐日英国大使館、駐日リトアニア大使館、駐日フィンランド大使館などが出席した。
 
2.主役は日本、米台は脇役
 今回のシミュレーションの目的は、「台湾海峡危機」が発生する前に、或いは、発生した頃、日本の既存制度や日本政府の意思決定能力を試すものである。台湾としては、想定される「台湾海峡危機」の主役ではあるが、今回のシミュレーションは、あくまで日本側(JFSS)が作成した3つのシナリオに基づき実施された。
 もう1つの目的は、日本政府の意思決定の対応力をより適切に検証し、思考の盲点を明らかにすることである。また、特定の出来事に対する台湾の反応を理解するためでもある。
 上記の点を踏まえて、今回のシミュレーションの観察点は、台湾ではなく、日本の対応と意思決定がどう成されるかにあることが分かる。今回シミュレーションに参加した日本の国会議員(11名)は、内閣総理大臣、官房長官、官房副長官、外務大臣、防衛大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、米国務長官、米国防長官役の他、国家安全保障局長、沖縄県知事、統合幕僚監部、陸上幕僚幹部、海上幕僚幹部・航空幕僚幹部役、及び各省の元事務次官経験者が重要なポストを演じた。
 
3.中国による対台湾フェイクニュース、最後は中国が日米に直接攻撃
 今回のシミュレーションと2年前を比較すると、最初は、台湾が中国によってフェイクニュースを仕掛けられ、その後、本格的なサイバー攻撃にエスカレートするという構図が非常に似ていることが分かる。