我が国のエネルギー安全保障における液化天然ガス(LNG)の課題

.

政策提言委員・元海自横須賀地方総監 渡邊剛次郎

 今年7月に実施された「第3回台湾海峡危機政策シミュレーション」のシナリオにおいて、所謂「グレーゾーン」の段階で中国が、我が国の枢要なエネルギー海上交通路(SLOC)の一部でもあるバシー海峡を含む台湾周辺海域に一方的な「海上臨時警戒区」を設定、実質的に船舶の航行を制限したとの想定が与えられ、その対応などが参加者で議論された。
 因みに、我が国のエネルギー海外依存率が9割近いことはよく知られており、昨年12月に決定された国家安全保障戦略においても「エネルギー安全保障の確保に向けた様々な政策の推進を通じ、有事にも堪え得る強靭なエネルギー供給体制を構築する」とされているが、一般的な関心は、中東から輸入される「原油」に集まりがちなのではないだろうか。勿論、原油が重要な一次エネルギーであることに間違いはないが、「石油備蓄法」などに基づき、現状でも国内備蓄は約8ヵ月分確保されている。一方、液化天然ガス(LNG)については法的な備蓄制度はなく、また、マイナス162℃に冷却して液化貯蔵する必要があるため、現時点で2~3週間分の国内備蓄しか確保できていない。尚、我が国の家庭用ガスの半分以上は「都市ガス(LNG)」であるのみならず、我々の生活や経済活動に欠かせない電気を最も多く供給しているのは、LNG火力発電(全体の約30%(2022年))である。また、それに次ぐ石炭火力発電(全体の30%弱)に関しても、その国内備蓄は約30日分にすぎない。